第15話:ジャッキアップ

さて、打設したコンクリートも順調に養生も進んでおります。
養生期間は現場での作業が出来ないので、次の土台の入れ替え
作業の段取りを進めております。
土台に使う米ヒバを、昨年から頼んでいた藤山製材所へ。

▲北斗市のセメント工場の横にある藤山製材所。

最近の住宅は大工が木材に墨を付け、仕口や継手を手刻みで加工
する事が無くなってきている。ほとんどがプレカットと言って、
機械で簡略的な継手などに加工し、現場で金物で補強するような
作りが多い。その為、一般に流通している木材は約3.6mの2間
の柱間の長さのものがほとんどで、大工による伝統工法の継手を
作ろうとすると短くて材料が余分に掛かってしまう。常盤坂の家
は全て手刻みによる加工なので4mの材料をお願いしていた。

▲桟積みされた4mの米ヒバの山。

そしてコンクリート養生4日目に、常盤坂の家に入れてもらった。
製材所で見た荒木のままお願いしていたが、藤山さんの計らいで
4面プレーナー仕上げで綺麗に仕上げて持って来てくれた。

▲綺麗に仕上がった米ヒバの土台。
▲養生最終日の深夜。土台も入り薪ストーブも復活し準備は整った。

養生5日目、土台の入れ替えをお願いしている大工さんが現場へ
やってきました。お願いした大工さんは 小柄な棟梁の高橋さん、
津島建工の親方津島さんのお二人。今回、大工さんに頼む工程は
土台入替えと、屋根の葺き替え程度なのでとても貴重。
まずは、玄関の土台の入れ替えからスタート。

▲鴨居が下がり戸も外れない状態なのでレールごと外す。

腐った土台をチェーンソーで切り落としてゆく。まさに外科手術。

▲こちらの土台は4.5寸角の通し柱を支えている。
▲玄関と千本格子の間の柱の付け根部分も切断。

次にいよいよジャッキアップをし、梁や胴差をサポートで仮に
支え、柱を土台から少し浮かせて土台を抜いていく。

▲津島さんが2階の胴差にジャッキを掛けると角にある通し柱が少し浮く。
▲土台が取り外された様子。外の風除室は春に取り壊す。
▲4.5寸角の通し柱は土台に扇ホゾで組まれていた。

下の写真、右側の土台には蟻掛けという仕口の加工がされている。
こちらの土台はここから5尺ほどは使えるので復旧する。

▲蟻掛けの土台は再利用する。

続いて、棟梁の高橋さんと入れ替える米ヒバの土台を選定し、
それに墨付けをして刻んでゆく。

▲土台の墨付けの様子。

通し柱に取り付く、桁行方向の基礎は、打ったのコンクリートの
土間から30cm立ち上げるため、 外壁のトタンを残し、内側から
壁の下地などを切断してゆく。

▲新たに打つ基礎に敷く土台の高さで壁を切断してゆく津島さん。
▲トタンの向こうに外が見えている。

一気にジャッキで上げるのではなく、玄関の方から少しづつ、
ジャッキで上げてはサポートで支えと繰り返しながら建物を上げ、
新たに打つ基礎に敷く土台の高さで柱と壁を切断しながら進む。

▲さすがは親方。腰の入れ方がひと味違う。

玄関から入って奥の方は、古い基礎が立ち上がっているので、
新たな基礎を抱かせながら、更に裾上げを行なうので天端には
また差し筋をし、ケミカルアンカー で固定してゆく。

▲トタンの内側には高性能の薄型断熱材を入れる。

手刻みで継手の加工が進む。下の写真はさきほどの復旧する土台
に新たに継手を設け、新しい土台と継いでいく部分を加工している。
常盤坂の家ではこれまで土台の継手は全て金輪継ぎ(かなわつぎ)
で組まれていたが、今回のリノベーションでは更に強度がある、
追っ掛け大栓継ぎでお願いした。

▲古い土台と、新しい土台を刻む高橋さん。

新しい土台と、昔からの土台が継ぎ手で組まれた瞬間は感慨深い。
こうして柔軟に継ぎ足して、住み継ぐことが出来るのが、日本の
伝統的な木造建築のすばらしい所である。

▲仮組みの様子。流石、ぴったりと納まっている。
▲刻んだ土台を合わせてゆく。
▲柱をジャッキで上げ、再仕様する土台も差し込む。
▲玄関の土台も納まり、ジャッキも次へ進む。

翌日、SK佐々木建設さんで立ち上がりの基礎の鉄筋を組み、型枠
を付け、その日に裾上げ基礎のコンクリート打設する。

▲型枠を付ける途中。裾上げ基礎は通し柱までで止まる。
▲足元も良くなり、ネコ押しもやりやすい。
▲幅180cm基礎にの0.5立米のコンクリートを打設。

土間と同じように、打設後5日間はジェットヒーターを昼夜かけ
湿潤養生を行なう。植物に水を与えるように、愛情を込めながら
コンクリートにも水を掛けて潤わせる。

▲ブルーシートで囲い、養生もコンパクトに。
▲打設中も大工の手刻みは続いていた。

木を扱い始めると格段に現場も面白くなってきました。

つづく