第10話:囲炉裏から薪ストーブへ

床下から現れた大きな囲炉裏も遂に解体の日がやってきた。
囲炉裏の解体には賛否両論あったが、第一に耐震改修の目標があり
基礎の補強のために打つ、コンクリートスラブの一体性を優先し、
解体に踏み切るが、こちらも再利用するため慎重に解体する事に。

▲レンガを5段積んで作られた囲炉裏。

まずはコツコツひとつづつ手で解体して行くが全く進まない。

▲小さなタガネでは全く捗らない。

すぐに解体できるだろうと甘くみていたが、昔のレンガはとても
柔らかく、目地や内側の化粧モルタルの方が強度がある為、叩くと
すぐにレンガの方に亀裂が入ってしまう。

▲元からなのか、柔らかくモロいレンガ。

これでは、ほとんどのレンガを壊してしまう。そこで平タガネと
サンダーを用意し、目地にサンダーで切れ目を入れ、平タガネで
楔を打ち込みながら作業をすると少し効率があがってきた。

▲サンダーを使うと切った粉で辺り一面真っ白になってくる。

やはり、仕事の効率は道具が大きく占めている。 地道な作業が続く。

と、そこにファイヤピットさんが薪ストーブを持って来てくれた。
これまで、ストーブも何も付けずにやってきたが、冬本番を前に
とてもありがたい。

▲とても可愛らしい形の薪ストーブ。

こちらのストーブは、地元函館の大和金属で製造しているもので、
たまご型薪ストーブとして昔から親しまれているタイプ。
函館は実は薪ストーブの産地であり、国産第1号ストーブもここ
函館で1856年に武田斐三郎の手によって誕生している。
たまご型ストーブは 3千円程度と安価で使い勝ってもいい。

▲上から見るとたまご型が良くわかる。

ストーブの底が傷みやすいので乾いた土を底に敷くと良いらしく
囲炉裏の下の方に貯まっていた灰を敷く。
早速、常盤坂の家 第一号たまご型薪ストーブに火入れ式を。

▲こちらの大石さんは被災地にもこのストーブを届けている。
▲煙突から煙が立ち上る。写真は雲に掛かっているが。。。

全く火の気のなかった家に、火が入った瞬間から何かが変わった。
原始の時代より、生活の中心にあった火というものの素晴らしさを
再認識させられた瞬間であり、家に命が吹き込まれた瞬間である。
揺らめく炎と木の爆ぜる音で、しばし優しい時間を過ごす。

▲あったかい、この暖かさは何よりも暖かい。

次の日、電気の線を工事用に切り替えるのに、灯工業の替地さんが
来てくれた。 インフラの整備から住まいは始まる。

▲内部の配線はやり替えるが、スイッチやコンセントは再利用する。

仮設電気も整い、レンガの解体も一気に進む。

▲解体終了。古い家には電球が良く合う。

更に、囲炉裏の下のコンクリートの土間も剥つり解体する。
土間下のトコからは白御影石の破片も出てくる。

▲剥つりもお手のもの。こちらも再利用。

コンクリート殻も綺麗に片付け、これまで囲炉裏のあった場所は
たまご型薪ストーブへと姿を変えました。

▲黒い煙突は屋根裏から出てきたものを利用。

今回の囲炉裏の解体でなんとか使えそうなレンガは60個程度。
他に30個くらいは大きく割れたりした。

▲収穫のレンガ達。表情も今のレンガにはなく柔らかい。

2011年の工事もこの辺りで仕事納めとなる。
手を付ける所どころ、日々面白い発見がありなかなか思うようには
進まなかったが、寄り道しながら進めるのがセルフビルドの良い所。
独立への奮闘記はいよいよ2012年、独立の年へと続きます。