第14話:木の家具と、大きな土間のある家

大屋根の家は、大工さんによる造作工事が進んでいます。
今回はキッチンやテーブル、ソファ等も大屋根の家の生活に
合わせて設計させていただきました。

▲唐松の引出しの箱を組み立てている。

キッチンはシンクのあるアイランド型と、背面にIHヒーターを
備えた作業カウンターとの2列型になっている。
フレームは厚物の針葉樹合板 、天板は鈴木木材さんで用意して
いただいたドングリの木でもある楢(ナラ)の天板が載る。

▲背面の作業カウンターのフレームを組んでいく。

フレームを組み引出レールを取り付け、引出しを組み込む。

▲引出しにはセットしてから、前板が取り付く。

続いて、アイランドキッチンのフレームも組んでいく。

▲こちらは大きなアイランドタイプになる。

キッチンはフレームを仮組みし、土間が仕上がると本組みとする。

続いて、リビングの家具を製作する。
床に出した地墨を基準に造り付けの木製ソファを組み立てる 。
テーブルの高さに合わせ肘掛けをサイドに配した3シーターで、
座面下と肘掛け下に収納を設け、床に使った杉板で作り上げる。

▲両サイドの肘掛け部分を組んでゆく。

座面と背もたれには絶妙な?角度を付けている。

▲背もたれ部分を組んでいる。

家具にも多種多様あるが、誰が作るかによりその設計も変わって
くる。今回は作り手である大工さんの技術と工法、使用する材料
から含めてデザインしてある。

▲サイドテーブル下と、座面下が収納になっている。

やさしい表情の杉なのに凄い存在感です。座り心地もバッチリ!

▲完成です!大きなクッションが似合いそうです。

よ〜く見ると、 なんと、サプライズで座面にチョウチョが。

▲座面の中心に黒檀でちょうちょ栓(別称:契り)が入れてある。

西村棟梁の粋な計らい。この仕事に誇りを持っている証ですね。

そんな椅子に座って見るテレビの下は、杉板でTV台を作ります。

▲こちらには有孔板とガラスで3枚の戸が入ります。

さらにさらに、この間に挟まれたテーブルは普通では可哀想っ。
そこで真ん中には、杉のローテーブルがきます。

▲通しホゾに割楔(ワリクサビ)の伝統工法で組んでいきます。
▲テーブルの上が片付くよう下にもう一段。

最近ではこうした、伝統工法での仕事はほとんど無くなっている。
そうした仕事を頼む設計者や、施主もいなくなって来ているし、
その良さや本物の仕事を分かってくれる人も少ないのが現状。
大屋根の家では、こうした仕事を理解していただける施主と、
その仕事に真摯に向き合ってくれる職人さんに恵まれた。
少しでも多く本物の仕事を残していくのが私の使命でもある。

▲木古内産 杉のローテーブル完成。可愛いすぎる!

そしていよいよ大屋根の家の床約半分、南側土間にタイルを
敷く為の工事が始まりました。 コンクリートの土間の上に、
さらに精度を出す為の下地調整モルタルを 敷いて行きます。

▲水分を少なくし割れづらいバサモルタル。

コンクリートの土間に直接タイルを貼っていく事も多いですが、
400角という大判タイルなので、このひと手間を掛ける事で
しっかりとタイルが貼れるようになる。

▲手際よくしっかり水平に均していく。

それから基礎の外周を中塗りモルタルの上から仕上げ塗り。

▲外部のモルタル塗りには急な乾燥が無い曇り空が最適。
▲最後に富樫左官による縦帚引き仕上げ。

浴室では腰上の壁と天井にプライマーを塗り、
浴室用防水シートを全面に張っていく。

▲改質アスファルトによる強力な防水シート。

2次防水までした浴槽部分にモルタルで中塗りを取っていく。

▲中塗りをする小林左官さん。

翌日、固まったモルタルの上に、タイルの割付けをし、基準の糸
を張っていく。この段階で善し悪しが決まる大事な作業。

▲実はタイル貼りも得意とする武澤左官さん。

モルタル下地の上に、保水材を混ぜたセメントペーストを塗り、
櫛ゴテ引きし、馴染みを良くしてからタイルを張っていく。

▲巧みに櫛ゴテを操る武澤左官さん。
▲空かさずタイルを張っていく。こちらがキッチンになる。

タイルを載せたら、ビブラートという振動工具で隙間がなくなる
ようしっかりと下地と圧着させていく。

▲ビブラートを掛けると剥がれのないタイルになる。

南の大きな土間は、冬場の太陽からの熱を蓄える蓄熱体であり、
土間下の土壌蓄熱床暖房の蓄熱体でもあります。
大屋根の家の中心で明るい南側にダイニング、南東がキッチンに
なり、南側外部にできるウッドデッキやドッグラン、家庭菜園を
気軽に部屋の延長としてラフに使う為の土間でもある。
どうしてもリビングを南にもって行きがちですが、テレビや映画
鑑賞を主とするリビングは安定した光りの北側に配置している。
吹き抜け上部のピクチャーウィンドーから太陽高度の下がる冬至
にはリビングまで光りが差し込む。

▲敷き出すと早い。左がキッチン、大きな窓の前がダイニング。

今回は目地をタテヨコ揃えず、ズラして貼っていく馬目地という
貼り方。一般的にタイルの半分ずつズラすのですが、1/3づつ
不規則にズラして貼ってもらっています。ランダムにすることで
自然に表情豊かになっていきます。左官屋さんも初めての貼り方
だったようで、『マブイ』を連呼して気に入った様子。

▲1/3ズラしでとても表情豊かになります。

玄関からは、黒っぽい300角タイルになります。
通常は見切りと言って、金属系の棒などを入れて逃げるのですが、
今回は自然に1/3ズラしの目地で貼り分けています。

▲黒いタイルの玄関も空間が締って素敵ですね。

最後に目地材を詰め、大きなタイル敷きの土間が完成です!

▲ダイニングから玄関の土間を見る。本当にマブイです。
▲リビングからダイニングを見る。外には休日返上で頑張るSK佐々木建設さん。

そして浴室も、中塗りまで左官で仕上がりました。

▲浴室も中塗りまで完成!次はいよいよ石を貼っていきます。

大きなタイル土間のダイニングの向こうには、大工さんが丹誠
こめて作った木の家具が揃ったリビングが続きます。

▲世界にひとつだけの木の家具です!!

大屋根の家での暮らしが次第に見えてきました。
明日からいよいよ木製キッチン、カーポート、浴室の石貼りが
始まります。

つづく。