第47話:2階 壁仕上げ

常盤坂の家も、瞬く間に師走を迎えてしまいました。
工事の合間にも、薪の準備等の冬支度に追われます。
土台を入替えていた玄関も、約一年ぶりに欄間と玄関引き戸を
取り付けました。ガラス1枚ですが北海道では、この風除けの
2重の戸が冷気を入れない為に、とても重宝します。

▲風除室の内側の戸が入り、少し暖かくなりました。

さて、天井という大きな山場を越え、次に壁を仕上げていきます。
壁の針葉樹合板は本来、構造用の下地合板である為、仕上げに
なる表面に使ったりはしません。通常は石膏ボードを張った上に、
クロスや塗装の仕上げをします。ただし石膏ボードは、構造上の
強度が合板に比べ劣る為、別に補強が必要になったりします。
今回は『構造=仕上げ 』という合理性を追求し、針葉樹合板に
塗装をして仕上げる事としました。

▲気温が5℃以下に下がらないよう温めながらの作業。

しかし、仕上げ面に好んで使われない訳もやはりあります。
合板に含まれるアクが、クロスや塗装の表面に出てくるからです。
それを、今回はアク止めシーラーを下塗りして抑えてから、
と思って進めて行くのですが、、、(汗)
まずは、釘の頭から錆が上がらないよう、打った釘の頭全てに
白い錆止めを塗り、その上にアク止めシーラーを塗ります。

▲一気と言いたいですが全体を1回塗るのに2日半掛かります。

アク止めシーラーは塗っても透明で分かりづらいですが、表面に
うっすらと膜を張ります。36時間十分乾燥させ、洋漆喰塗料を
塗って仕上げていきます。

▲仕上げ塗り1回目。まだムラが目立つ。

この洋漆喰は天然成分100%でカビや菌を死滅させる程の
PH12という強アルカリ性なので、今回は押し入れなどの
カビが生えやすい部分も全てこれで仕上げます。
珪藻土や、日本の漆喰でもこれほどのPHはありませんので、
高温多湿のカビ易い日本の気候には洋漆喰が適しています。

▲福田英宏建築設計事務所の福田さん。休日なのに残業申し訳ないです!

休日にお手伝いに来てくれた福田さんに塗って頂いている間、
続いて浴室の壁を仕上げていきます。

▲浴室を見る。仕上げ前日に定着を良くするプライマーを塗った。

浴室はウレタン防水の上に、スタッコをコテで仕上げます。
スタッコとは、いわゆる防水性のある漆喰で、抗菌作用もあり、
自然浄化の光触媒作用もあり、自宅で試験的に使ってみます。

▲筆者の私。撮影:福田英宏建築設計事務所 福田氏。

左官経験6回目の私には、この複雑な形状の浴室の壁&天井を
コテ1つで仕上げるのは至難の技で、絶叫しながら塗りました。

▲入り隅、出隅と難関だらけの浴室。

朝から晩まで悪戦苦闘し、ようやく仕上がりました。
仕上がったとは言っても、素人の域を超えた仕事だったので、
細部は悪いですが、達成感の方が上回ったので良しとします。

▲フラットに仕上げるつもりが、技術的にコテ跡を消せなかった。

元い、福田さんのお手伝いのお陰もあり、壁の仕上げ1回塗りを
終えた壁に、異変が。。。恐れていたアクが出てきました。

▲アクは乾くのと同時に表面に上がってきます。

節の部分の強いアクは、アク止めシーラーでは抑えきれずに表面へ。
青いテープの中の節で2回塗りですが、 まだうっすら出ています。
一度アクが出ると、仕上げを剥がしてアク止めを2回塗りにするか、
出ないまで塗り重ねるかの選択肢しか思いつきません。
そんな時、外壁の塗装や浴室の防水をやってくれた伊藤防水の社長が
現場に見にきてくれ、塗り重ね用の水性塗料を提供してくれる事に。
本当に助けてもらってばかり。感謝、感謝です。

▲塗って、塗って、塗って、塗り重ねる日々が続く。

場所にも寄りますが、3〜5回塗りでアクが止まりました。
アクが止まった上に、ようやく再度、洋漆喰で仕上げます。

そして、お陰様でようやく塗り上がりました。

▲『切り妻天井』の寝室。
▲寝室から右に浴室、左に収納を見る。
▲トイレの中から、脱衣越しに浴室を見る。
▲LDKより、トンネル越しに寝室方向を見る。
▲LDK、正面の壁にキッチンを作る。
▲LDK、窓越しに街路樹のナナカマドを見る。

思いがけず苦戦した塗装も終わり、次は床に進んでいきます。

 

そして突然ですが、塗り重ねに苦戦している最中に、我が家に
新しい家族が誕生しました。3200gの元気な女の子です。

▲妻は命がけで産みの苦しみを乗り越えてくれました。

名前を『菜奈』 と命名。
常盤坂の家の前にあるナナカマドから名前をもらいました。
昔、多くの大火に見舞われた函館では、7回かまどに入れても
燃えにくいというナナカマドを防火帯として街路樹に植えました。
常盤坂の家も、このナナカマドに見守られながら今があります。
菜奈にも、函館の街を、この常盤坂の家をずっと見守っていって
欲しいという願いを 込めて。

▲東京で妻がお世話になった大僧正に漢字を付けて頂いた。

常盤坂の家と私達夫婦にとっても、新たな1ページの幕開けです。

▲ナナカマドと常盤坂の家。

完成を心待ちにしている菜奈の為にも、パパは頑張ります。
これからも、常盤坂の家&親子共々よろしくお願い致します。

つづく。