第46話:切妻&寄せ棟天井

遂に函館は一昨日、平年よりも少し遅れて初雪が降りました。
そして昨日で、常盤坂の家のリノベーションを始めてちょうど
1年が経ちました。 この家に出会った時から、天井と空間の
イメージが あり、思えば1年前の昨日、真っ先にこの天井裏
の調査に潜りました。その天井を仕上げる日がやってきました。

まずは、天井に張る材料の下準備から。
常盤坂の家に使われていた、天井板、壁の羽目板を大事に剥がし、
ご近所さんの ガレージをお借りし、保管してあったのを使います。

▲大量にストックしてある、常盤坂の家の資材たち。

この板類は全て秋田杉。解体する時に、材料になるべくキズを
付けないようにするのに手間は掛かりましたが、 大事にすれば、
また再利用できます。

▲約400枚強ある秋田杉の板。

多くの板は壁に張ってあったもので、壁には板の上に新聞紙など
袋貼りして隙間風を防いだり、壁紙を貼ったりしていました。
この材料を木洗いしていきます。木洗いと言っても、薬品による
危険なものではなく、水洗いです。

▲before。ほとんどの板は紙だらけ。手強いです。

薪ストーブはフル回転で、すこしでも水を温めてもらいます。

▲暖を取りながら、湯を沸かす。薪は最高です。

紙を水に浸し、フヤけてきたらスクレーパーで剥がしていきます。

▲地道な作業です。この白い部分が頑固もの。

紙を剥がしたら、スコッチブライトの スポンジで頑固な汚れを
磨き落していきます。

▲after。木の目に入り込んだ汚れは落ちませんでした。

洗い終わったものから、干しては乾燥させます。

▲薪を焚き、暖かい2階でしっかり乾燥させます。

そんな地道な作業を、せっかくのお休みの日に福田さんが
お手伝いに来てくれました。

▲福田英宏建築設計事務所の福田さん。ありがとうございました!

取りあえず板の半分200枚位を洗うのに1週間ほど掛かりました。

まずは切妻天井から仕上げていきます。
天井を張る前に、壁と天井のぶつかる縁に、塗装をのせておきます。

▲ついでに釘頭にも白の錆止めを塗っておきます。

これで、ようやく張り始められます。天井に張るのは、元々
2階の和室の稲子天井に使われていた無節のもの。
板は下から順に、少しづつ重ねる下見板張りにしていきます。

▲寝室は落ち着けるように、無節の一番良い板を張ります。

古い板に、新しいピカピカの釘は全く合わないので、この天井を
張るのに使う釘は、もともと使っていた錆びた釘を大事に抜いて
取っていたものを使います。同じ時を重ねたものが一番馴染む。

▲釘コレクション。左が羽目板用の錆た釘。

そして切妻天井が完成!

▲天井竿縁の跡が気になりますが。。。

どんどん行きます。つづいてようやく寄せ棟天井です。
こちらに張るのは、壁に使われていた相決の節のある板です。

▲張り始めの1枚。寄せ棟部分は全部斜め。。。

寄せ棟天井も下の板に少しづつ重ねる下見板張りで、1段づつ
グルグルと張り進めて行きます。

▲グルグルと13週しなければなりません。
▲太鼓張りの上は、一枚一枚型をとって合わせます。

木は季節によって、空気中の水分を吸放出してくれます。
板は湿気で広がったり、乾燥で縮んだりするので、その際に板が
割れないように釘はなるべく狭く2点打ちとします。

▲下見板の羽重ねの部分。決りは深みを出すのにあえて残す。

壁の板は幅が、8寸、7寸、6寸、5寸、4寸 と5種類あった。
これを万遍なく使わなくては間に合わないので、寄せ棟天井は
下から上に向かって、板の幅が狭くなるように割り付けて張る。

▲段々と板の幅が狭くなると高揚感が生まれる。

そして未来への贈り物として、抜け節のところには、今の時代を
未来に伝える為に、裏にメッセージを書いて新聞紙を当てる。

▲トップ記事はIPS細胞について。節穴からIPSの文字が見える。
▲最後のワンピース!も抜け節。新聞入りました。

そして遂に寄せ棟の天井も完成しました。

▲さすがに一人、上を見上げ達成感に浸る。

あっという間の一年。そして常盤坂の家リノベーションまさかの
二年目に突入です。(もう、いつ完成とは口に出せません。。。)

この一年で感じたことは、その地域やその場所、その歴史的背景
を知り、未来を考え、ここで何ができるかを考えること。
考えたことを少しでも多くかたちに残し、伝えていくこと。
それは大それたモノにお金を掛けるだけではなく、
手間と愛情をかけてゆくことで残せるモノがあるということ。
終わりなき常盤坂の家での模索。

つづく。