第2話:対話

家を買った喜びも束の間。すぐに調査を開始した。
この調査ではいろいろな観点から、プロジェクトの本質を捉えていく。
建物周辺の歴史的な背景、隣接建物との関係、日や風の入りなどの環境面、
建物の構造特性、空間構成、劣化状況などを多角的に見て、
この家が発している声に耳を傾け、ときに話しかけるように進めていく。
ここから常盤坂の家との対話が始まる。

▲函館の歴史を見つめてきた常盤坂

函館山の麓に位置するこちらの弥生町界隈は、港を望み函館の開港と共に
発展してきた地域で、この界隈の館が箱の形に似ていた事から『箱館』と
呼ばれるようになった、という説もあるように函館の原点でもある。
また、この地域は明治から昭和にかけて度重なる大火にも見舞われた。
この家は昭和9年の大火のあと昭和10年頃に建てられたという。
前所有者のおばあちゃんの更におじいちゃんが建てたので、私で4代目。
昔は画家の田辺三重松や三箇三郎といった文化人も出入りしたらしい。
積み重ねられてきた歴史を知り、自分が加われた事はとても嬉しい事だし、
その歴史的背景や建物の記憶を大切に、住み継いでいきたい。

常盤坂の家は、土地の間口いっぱいに建てられている。
そして、建物のウラには3mを超す石垣の上に、ウラの空き家があり、
裏の空き家の屋根から雨雪が、建物と石垣の間の、奥行き一間の坪庭に
めがけて全て落ちてくる。日も当たらない坪庭はとても湿気ている。

▲ウラの石積み擁壁と建物の間の坪庭

採光は道路側正面に斜めに差し込まれる西日と、2階の真ウラ側に入る
わずかな朝日と午前中の光のみで、1階はとても暗いし風が抜けない。
そして、道路側と向かって左(坂の下)側の土台は石積基礎にのっていて、
ウラ側と向かって右(坂の上)側の土台は、外部の地盤面より下がってる。
このような状態から、この家の劣化状況はおおよそ予想がついていた。

▲坂の下側の石積基礎。隣りとの隙間
▲坂の上側は土台が埋っている。

床を上げ、隠れていた土台周りや、基礎の状況などを確認。
思わぬ発見など、次第にいろいろな事が分かってきた。

つづく

 

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