第2話:呼吸する空間

わずか24㎡しかない部屋はあっという間に、解体が終わりました。
コンクリートの壁に直張りされたビニールクロスまで撤去しました。
天井の点検口を新設し、給気ダクトなども移設し、天井裏の配線も行ないます。

▲低温乾燥された道南杉の敷居、鴨居、方立ての取り付け。

この建物はこれまでわずか3㎝の外断熱を施しただけでした。「茶の間」では、
少ないエネルギーで寒い冬を暖かく過ごせるよう、壁・床・天井の断熱改修も
行ないます。まず冷たいコンクリートの壁の内側に下地を組んで壁をフカシます。

▲モノが撤去された室内は少し広くなりました。

下地に不織布のシートを張っていきます。この間にセルロースファイバーという
新聞古紙をリサイクルした断熱材を吹込んでいきます。

▲シートを張っていく伊藤断熱さん。

下の写真が、新聞紙を再利用して出来たセルロースファイバーという断熱材です。

▲CO2排出量も極端に少ない古紙を再利用したセルロースファイバー。

セルロースファイバーは、高い断熱性能はもちろん、吸放湿効果や吸音効果、防燃
性能や防虫・防カビ効果、撥水効果もありリサイクルも可能な断熱材です。
また、壁にはチャフパック工法というホタテの貝殻を使った天然接着剤を含んだ
工法によって、長い年月による断熱材の沈下も防ぐものとなっています。
詳しくは、函館視力障害センターのブログでも紹介されております。

▲シートに切れ目を入れてセルロースファイバーを吹込みます。

断熱工事が終わると次ぎに壁や天井に張るものは、100%天然原素材のモイス
という不燃の内装材です。主成分は畑の肥料になるバーミキュライトという鉱物。
モイスは多孔質で、ホルムアルデヒドなども吸着・固定化し、消臭効果もあります。
またその吸放湿効果と防カビ性能などから、多分野で活用されてきました。

▲土にも還るモイス。漆喰のような柔らかい表情。

モイスは寸法の安定性や加工性の良さから、この上にクロスなどを施さなくても
これだけで仕上げられます。工程を省けるので、コストと時間も削減できます。

▲一発仕上げなので面取りをしながら張っていきます。

天井には既存のボードの上からモイスを石目のように乱張りで仕上げます。
セルロースファイバーにモイス、無垢の床と、それぞれの吸放湿効果によって
調湿され空間全体が呼吸していきます。まさに鼓動が聞こえてきそうです。

▲天井には道南杉の周り縁を回します。

そして照明器具はLED、天井が低いのでのダウンライトとしてあります。
蛍光灯の廊下から入った所と、ベランダ側の真ん中の2カ所は昼白色、その他には
自然素材を引き立てる電球色と使い分けています。蛍光灯の均一な明かりではなく、
家具レイアウトにより、弱視者でも分かり易いメリハリのある照明計画としました。

▲奥の真ん中に見えるのが昼白色、他が電球色。

壁と天井のモイスも仕上がり、ライティングされグッと空間も引き締まりました。
次はいよいよ、道南杉の床の浮づくりワークショップへと進みます。

つづく。