冬至を前に、常盤坂の家は長い冬を迎えました。
常盤坂の家の2階住宅部分は、天井・壁と仕上がり、
続いて最後の床の段取りを進めて行きます。
そんな折、再び北川さんが助っ人に来てくれました。
床の段取りがまだだったので、1階の通り土間の
天井を張って頂く事になりました。
![DSC05835](http://togashimasayuki.info/wp-content/uploads/2012/12/DSC05835-208x278.jpg)
こちらも2階天井と同様、洗いをした秋田杉の板なのですが、
その中でも選りすぐりの板を、この為に取ってありました。
![DSC05846](http://togashimasayuki.info/wp-content/uploads/2012/12/DSC05846-360x269.jpg)
そして板を留める、釘は一本一本抜いて取っていたものですが、
2階の天井でほぼ使い切ってしまったので、次は真鍮釘です。
この真鍮釘は、古くからやっている金物屋さんで、かれこれ
30年ほど売れずに残っていたもの。新品なのに、経年変化で
黒ずんで味が出ております。量り売りで、破格で購入。
![DSC05842](http://togashimasayuki.info/wp-content/uploads/2012/12/DSC05842-360x269.jpg)
常盤坂の家では、こうした新旧の材料が入り交じるのですが、
主には天井と、廊下やトンネル、階段などの移動を伴う場所で
使うように意識しております。移動という移ろいと、古材が
長い年月を経て来た、時の移ろいを掛けています。
そうした思いの一本の軸があると、乱雑にならずまとまります。
![DSC05861](http://togashimasayuki.info/wp-content/uploads/2012/12/DSC058611-360x269.jpg)
流石、プロは仕事が綺麗で早いですね。 ありがとうございます。
![DSC05860](http://togashimasayuki.info/wp-content/uploads/2012/12/DSC05860-360x269.jpg)
近所にストックさせて頂いていた、畳の下地になっていた荒床を
再び持ってきました。 常盤坂の家の荒床は、1階がヒバ材で、
2階が杉板になっていました。今回の2階の床も、この杉板を
ひと手間加えて再利用していきます。
![DSC06013](http://togashimasayuki.info/wp-content/uploads/2012/12/DSC06013-360x269.jpg)
古民家改修などでは、こうした無垢の板を再び機械で削りカンナを
掛けて真新しくして再利用するのが主流です。
それができるのが、また無垢の板の良い所でもある訳です。
常盤坂の家ではどうするか考えました。畳の表替えをするように、
この荒板も表替えをすることにしました。そう、裏で使います。
![DSC06020](http://togashimasayuki.info/wp-content/uploads/2012/12/DSC06020-360x269.jpg)
荒板というだけあって、丸太から大きな鋸で切り出しただけの
粗い木肌になっています。これを機械ではなく、ハンドサンダー
を使って、手でヤスリを掛け使います。約畳25枚分。
![DSC06021](http://togashimasayuki.info/wp-content/uploads/2012/12/DSC06021-360x269.jpg)
コレだけの量を、手でヤスリ掛けするのも大変な作業です。
しかし、手で仕上げなければ出せないものがあります。
![DSC06040](http://togashimasayuki.info/wp-content/uploads/2012/12/DSC06040-360x269.jpg)
![DSC06042](http://togashimasayuki.info/wp-content/uploads/2012/12/DSC06042-360x269.jpg)
![DSC06026](http://togashimasayuki.info/wp-content/uploads/2012/12/DSC06026-360x269.jpg)
手でヤスリを掛けなくては出せないのが、この鋸の痕跡。そして、
木目に沿ってヤスリを掛けるので、木目が多少浮き出てきます。
それを更に洗うと、自然な浮造り仕上げに!
![DSC06047](http://togashimasayuki.info/wp-content/uploads/2012/12/DSC06047-360x269.jpg)
全部が全部、このように綺麗に浮造りになる訳ではありません。
綺麗に木目が通り、柾目に近い部分が綺麗に出ます。
また、こうしている事で、新たな事実が発覚!?
これまで常盤坂の家では、棟札に記載が無く建てた棟梁の名前等
全く分からなかったのですが、荒床の裏から名前が出てきました。
![DSC06068](http://togashimasayuki.info/wp-content/uploads/2012/12/DSC06068-360x269.jpg)
私の推測では、青森ヒバや秋田杉が多く使われているのと、
昭和9年の大火後の建築という事で、青森や秋田から復興の
手伝いに来た、個人の野村という大工さんが建てたのではと。
推測の域は出ませんが、いろいろと想いを巡らせます。
![DSC06072](http://togashimasayuki.info/wp-content/uploads/2012/12/DSC06072-360x269.jpg)
ここまで出来たのが12月11日のお話。次の日、過労で倒れ、
次の日から、別プロジェクト『大屋根の家』が本格的に始動し、
当分、大屋根の家に集中する為、常盤坂の家は冬眠に入ります。
次の工事再開は来年2月下旬からになります。
今年も一年、常盤坂の家と共に、多くの方から支えていただき
ようやくここまで辿り着きました。予定を大きく遅れ、家族や
関係者の方々にもご不便を掛けてしまっております。
勝手ではございますが、ここは無理を押して進めずに行く選択
としました。本年中の皆様のご愛顧に感謝申し上げます。
来年も常盤坂の家共々、宜しくお願い致します。
![DSC06245](http://togashimasayuki.info/wp-content/uploads/2012/12/DSC06245-360x269.jpg)
みなさまも良いお年をお迎え下さい。
つづく。