第50話:そして2014年

2013年はすっかりブログの更新も停滞させてしまい大変お待たせしました。
本年もお付き合いの程、宜しくお願い致します。
あの後、少〜しづつではありますが進めておりました。今回はあれからの事を、
振り返りながら書いていきます。長くなりますがお付き合いください。
常盤坂の家の隣り、目の不自由だったおばあちゃんが暮らしていた長屋は遂に
解体される事が決り、道具を取りに行くと重機が家を突き破っておりました。

▲しばらく常盤坂を空けていたら遂に、、、

こちらは常盤坂の家よりも前から、この場所でこの坂を見守り続けてきた家です。
伝統的建造物群保存地区に隣接するこの界隈でも、2013年もこうした古民家が
何件も姿を消しました。一旦、壊されてしまうとその後には何も残りません。
常盤坂の家のように、古き良き建物を街の財産として残し、活かしていってくれる
志しのある方が現れることを願い、 常盤坂の家のブログはその再生の記録として
公開しております。今年はまずは2階に住めるよう頑張ります。

▲隣りの家の形見として階段と梁、建具を何枚か頂きました。

さて2階では床が敷き終わり、キッチンの製作を進めました。シンクは元々あった
キッチンから取り外して再利用します。

▲シンクのBifore。アルミテープなども張られたステンレスシンク。

それのバックガードを切り落としサンダーで磨くと、再び輝きを取り戻しました。

▲After。シンクの裏には木で骨を組んで差し込んでいます。

そしてキッチンのフレームは、古材で簡単に組んでいきます。

▲杉、ヒバ、栗の木、カバの古材を木組みで組んだフレーム。

ジョンから譲り受けた水に強いヒバの床材をキッチンの天板に再利用します。

▲本実ね加工されたヒバの床は代々受け継がれた材料。

順番に張っていくとキッチンの天板が組み上がります。

▲DIYで造る簡易なキッチン。奥の穴にビルトインのIHが入る。

今回のキッチンは自分で出来る範囲で簡易な作りにしました。下はフレームを組み、
間に既製のキャスター収納やカゴなどでカスタマイズしていきますが、一番右側の
スペースのみ引出しを付けることにしました。箱は杉と古材の板を再利用します。

▲側板は杉、底板は壁から剥がした杉板の古材。底にはキャスターを付けます。

下段の引出し扉は、こちらもジョンから引き継いだ函館の教会の倉庫に眠っていた
木箱の一部を使います。なんでも、倉庫の整理の際にこの箱は壊して処分される
ところを目撃したジョンが、扉だけもらってきたとか。もったいないという文化
がありながらなぜ日本人はこうしたものを大事にしないのか、とジョンは嘆いて
いました。彼が日本を離れる際、この扉を私に託してくれました。

▲ジョンが託してくれた扉。かなりのアンティークです。
▲真鍮の引手部分。開港と共に海を渡って来たものではないか。

上段と中段の扉には、それに負けない存在感のあるものを合わせます。上段の扉は
2階の廊下の床だった古材、中段には屋根裏から出てきたので当時も古材であった、
楢とイタヤカエデのフローリング材を使います。引手には、こちらも常盤坂の家で
使われていたカスガイを、杉本洋鍛冶工房さんで叩いてもらったものを使いました。

▲イタヤの表面は、チョウナ仕上げのようだ。
▲木箱なので重いですが、引出しが3段できました。

それからレンジフードを取付け、蛇口の下にはタイルを張り、壁には近所のカフェ
エビスさんで頂いたケヤキのフレームに、常盤坂の天井の杉の古材を背板に張った
ボックスを取付けました。

▲蛇口はとても安価なものを中国から仕入れました。

そこに、吊り戸棚をつくります。常盤坂の家の吊り戸棚は、その名の通り、本当に
吊ってみました。板に穴をあけ、漁師さんの使う麻紐を通し、高さは結びで調整し
それを太鼓梁から吊るします。この結びの加減が悪く真ん中が少したわみましたが、
ご愛嬌ということで、吊り棚ができました。扉は後から取付けます。

▲この吊り調整がひとりではとても難しかった。。。

ひとまず、キッチンが一段落した小春日和の常盤坂の家の玄関先に何やらプレート
が取り付きました。函館市で新たに創設された景観登録建築物に指定されました。

▲景観登録建築物に選ばれた常盤坂の家。

都市景観形成地域内で昭和30年代以前の歴史的町並み景観を形成している建物で、
景観指定建築物のように修復に補助が出る訳ではありませんが、その価値を評価する
事で利用促進を図る為に創設された。外観を変更する際は届け出が必要になる。

▲この建物は、都市景観形成地域の歴史的な町並み景観を特徴づけている重要な建物です。と記されています。

登録されたもの以外にも、まだまだ函館の西部地区には町並みに寄与する建物が
いっぱいある。その建物の価値がもっと見直され活用される日がくるのを願う。
2階では、今度は寝室のベッドを古材も使って製作します。

▲脚は柱の切れ端を、フレームは敷居などを再利用。

古材の脚の上にヒバの板を張って完成です。この上にマットレスを載せます。

▲床にはしっかり、湿気抜きの穴まで開けました。

次は1階のトイレの床にタイルを張っていきました。タイルはサンプルでもらった
ものを敷き並べてコラージュしていきます。 サンプルなので、何処にどのメーカー
のものが張られていくかもしっかりナンバリングします。

▲こうして見るとタイルも様々ありますね。

サンプルタイルの床も完成です。

▲壁といい、床といい凄いことになりました。お掃除は大変です(笑

手洗いの洗面ボウルには床下から大量に出てきた植木鉢の中から、目皿の大きさに
合う穴のものを使います。

▲大石さんとこんさんに排水の目皿をつけてもらいます。

植木鉢洗面ボウルを取り付け、蛇口は良いものが無かったので取りあえず止水栓を
蛇口の代りに使っていきます。そして、便器の取り付けも終わりました。水はまだ
メーターがついていないので出ませんが、トイレも完成に近づいています。

▲照明や、欄間などまだ少し仕事が残っています。

近くお客さまが大勢いらっしゃる事になり、 2階の吹抜けに手摺を付けました。
ただの手摺ではなく、カウンターと棚も兼ねた手摺にします。解体されてしまった
隣りのおばあちゃん家からいただいた窓をつかいます。

▲引き違いだった扉の戸車を外し、壁として組み込みます。

建具の方竪を柱代わりにつかって、上に杉の床材の余りを使ってカウンターを組み、
そこに絡ませるように、書斎スペースの机も組み入れます。

▲まだこれでは強度はないですが、とりあえず間に合わせです。

そして、9月に函館で開催された開港5都市景観まちづくり会議の視察先に選ばれ
この地域の魅力を発掘するワークショップの 一環として、各地のまちづくり関係者
の皆様が常盤坂の家に来てくださいました。

▲皆さん、気長に完成を待ってくれる妻を褒めておりました(笑)ごもっともです。

無事にワークショップも終了し、各地の方から沢山の刺激をいただきました。
その後、またしばらく現場を空けてしまいましたが、雪が降る前に屋根に煙突の
穴を開け、大石さんが用意してくれたフラッシングを取付けました。

▲後施工の難しい納まりも嶋崎さんならお手の物でした。

11月で常盤坂の家のリノベーションを始めて2年が過ぎましたが、2013年 は
お陰様で忙しく、また引っ越しは先送りとなりました。せめてという事で、元町に
あるY写真館の桜井さんに娘の1歳の記念に家族写真を撮ってもらいました。

▲11月24日、ナナカマドの見える2階の出窓の前で。

年末には解体された隣りの土地に、新たな家がアッという間に建っていました。

▲高い家に挟まれ、なんだか少し肩身が狭くなりました。

こうして常盤坂の家の2013年は瞬く間に過ぎてしまいました。
そして2014年、年も明け心機一転し春の引っ越しを目指して動き出しました。
手始めに、まず手摺の続きです。棚を取り付けてその前に脚を建てました。

▲ヒバの棚板に、古材の脚を取り付けました。

階段を登りきったホール脇には、元々あった柱の通し貫の穴に新しい貫を入れ、
通し貫の伝統工法で 楔で締めて構造補強しました。

▲一番上のみ、両柱が通しホゾだったのでちょっと飾りを入れてみました。

そこに、2階に元あった和室の竿縁天井の竿縁を再利用して、
竿縁の格子スクリーンとしました。

▲竿縁の格子スクリーンで2階も和洋折衷の部屋になりました。

これで、手摺カウンターと書斎スペースがほぼ出来上がりました。

▲机の上にもう少し棚を付けたいところですが材料切れ。

ひとまず、次の段取りがつくまで次は1階をやっていきます。
昨年末に杉本洋鍛冶工房 の杉本さんが作ってくれた薪ストーブも届きました。
隣りに接近して家が建ったので、壁から出ていたダルマストーブの煙突は撤去し、
屋根の煙突がつくまでは、まだ薪ストーブが使えません。そこで近所の松田さんが
使っていない石油ストーブを貸してくれました。本当に寒いので助かります。

▲右のが杉本さん作の薪ストーブ、左が近所の松田さんが貸してくれたストーブ。

1階に降り、トイレ前の間仕切り壁を造ります。こちらはただ壁を張るのではなく
トイレのコラージュ壁のように少しだけ遊びを入れます。

▲嶋崎さんにもらった花柄のガラスに、ジョン夫婦からのガラスブロック。

いろんなガラスや、木箱などをどんどんコラージュしていきます。

▲達さんにもらったWILD TURKEYの木箱から、野点箱まで。箱ものは脱着式。

そして完成したのがこちら。こちらから見て壁になっているところは、反対側から
棚として使えるようにもなっています。また掃除は大変です(笑)

▲ガラスは2カ所だけ可動式にしました。

そして、階段や廊下の耐震補強で入れた耐力壁の構造用合板の上には、新聞紙を
剥がして洗いを掛けた杉の古い板を張っていきます。

▲右半分は全部古材の新しい壁。

古材で新たに造った廻り階段の壁にも杉の古い板を張り、裏側の小屋裏収納の為の
明かり取りのガラスブロックも入れます。

▲この辺りは完全に造り変えた部分だが、古材で造ったので全く分からない。

古材で造ると、もはや何処が新しくて、何処が古いという違いは分かりません。
階段や廊下などの動線空間は、壁も古材で統一しています。 動線という流れの中で
時の流れも感じて欲しいと思っています。

さて、今年も忙しくなる前に3月頭に引っ越し宣言をします。宣言でもしない限り
またズルズル来年になる恐れもありますしね。1階は住みながら工事を続けます。
有言実行できるよう頑張ります!出来なかったら笑ってください!

▲凍てつく常盤坂の家での工事は続きます。

つづく。