第1話:解体〜冬囲い

9月に火事に見舞われ、10月に再建の相談を受けた島牧の吉澤さん家。
現地調査に訪れたその場で再建案を練り、11月に工事がスタートしました。
大工さん1人とお父さんの手を借りながら、吉澤さんとの3人での作業。

▲着工後1週間ほどで壁は解体され、屋根も半分撤去されていました。

着工して間もなく平地でも一気に雪が積もり、更に過酷な工事になりました。
そんな雪の中で壁まで撤去され、次はいよいよ屋根の解体に入ります。
屋根の板金と野地板を剥がし、タル木や母屋・束などを撤去していきます。

▲火元から遠い方の小屋組みまでは火が回っていない。

この工事では複雑だった無落雪の屋根から、シンプルな水勾配程度の切妻の
フラットルーフへと屋根を架け替えます。

▲奥の梁がない部分が火元になった。

表面が煤けた梁も内部まで燃えなかったものは再利用し、小屋組みを組み替えて
いきます。棟は、梁に梁を重ね勾配をとり、屋根タル木を掛けます。

▲屋根タル木を載せ、屋根勾配と軒の出を確認。

それから約1週間後。屋根タル木の上に野地を張り、外壁の構造用合板を張って
サッシュまで一気に取り付きました。

▲現しのタル木の連続する様子が美しいです。

屋根は養生をし、忙しい板金屋さんが来るのを待ちます。

▲奥に見えるのが父が経営する島牧ユースホステル。

内部の壁を剥がさない部分には、外からネットを張って断熱材を壁に吹込みます。

▲左の窓廻りがブローイングのネット、右がタイベックシート。

島牧の家の断熱材は、古紙を再利用したセルロースファイバーのブローイング。

▲内部のネット張りの様子。

セルロースファイバーには高い断熱性能はもちろん、吸放湿効果による結露予防、
吸音効果、耐火性能と共に、製造までのCO2排出量が他の断熱材に比べて大幅に
低いのが特徴でリユース・リサイクルも可能な優れもの。

▲ネットに切り込みを入れ、いよいよ吹き込み開始。

また、壁はチャフパック工法という湿式工法で、チャフウォールというホタテの
貝殻を利用した塗料の成分が接着成分として含まれ、古紙と結合することで、経年
による沈みを予防します。その成分により、除菌や消臭効果もプラスされます。

▲内部からもセルロースファイバーブローイングを吹込む。

外部のブローイングが終わると構造用合板が張られ、全体がタイベックシートで
覆われます。 シートのジョイント部はすべて気密テープを張り隙間を無くします。

▲ここまで包まれると、ひとまず雨も風も防げるので一安心です。

タイベックの上には通気胴縁を流し、さらに横胴縁を流して外壁の下地を作ります。

▲煙突も見える東側の外観。木製の縦長窓は再利用のもの。

着工から約3週間。外壁の下地までで大工さんの応援は終了。これで吉澤さん一人
になり、一気にペースダウンとなります。ここからは自分のペースで、じっくりと
考え、造り込んでいくことになります。

▲ここまで出来て少しホッとした吉澤さん。

そして、これから島牧の家も本格的な冬を迎えます。年内どこまで進められるか。
吉澤さんにとってはこれからが第2のスタートでしょう。

つづく。