第2話:基本設計〜請負契約まで

昨年末に本格的にスタートした大屋根の家は、
それまで煮詰めてきた基本設計をまとめ、地盤調査資料も含め、
一気に実施設計へと突入した。

▲年末年始も構造設計士との打合せの日々。

基本設計時には、お施主さまからの断片的なご要望に対して、
この土地で、この場所でならどういった暮らし方が可能か 、
なんどもプランニングを繰り返しながら、お施主さまなりの
生活のストーリーを組み立てるように、カタチにしていく。
基本設計では、配置計画や採光、通風、暖房計画などなど、
様々な要素を多角的にまとめ大きな骨格を作り上げる。

実施設計と平行し、今回フラット35Sエコの省エネルギー性に
優れた住宅としてⅠ地域の省エネ等級4を取得して金利の優遇
を受ける為、検査機関に設計審査を申請する。

▲左が申請書、右が合格通知書。

実施設計では基本設計を元に、構造や電気、設備や細部の納まり
まで検討し、しっかりした見積りと工事が進められるよう図面を
書き進める。この頃になると更に打ち合わせが増える。
今回は工期の関係もありプレカットの選択となり、大屋根の家の
軸組みのプレカットを担当する佐藤木材へ。

▲佐藤木材の函館本社。

大屋根の家は、土台に米ヒバ、軸組みには米松の無垢を使って
金物工法により組み上げる。 軸組みのサイズや、窓の位置高さ、
接合方法など詳細をチェックしていく。

外壁は鹿部町の隣り、森町にある三上製材所の唐松の羽目板。
唐松特有の回旋木理という性質で捻れやすく、なかなか扱いは
難しいのですが、木目の美しさと腐朽しにくい特徴があります。
数ある板の中から三上さんは厳選したものを出してくれます。
板張りの方法も様々あり、検討を繰り返し設計していきます。

▲事務所の裏には駒ヶ岳が望める素晴らしいロケーション。

三上さんには外部のデッキ材、枕木の賃挽きなどもお世話になる。

▲こちらが地元唐松の原木の山。

こちらには、三上さんお手製の超エコな木材自然乾燥室まである。

▲自然の力を利用して、じっくり乾燥ができる。

更に大屋根の家の床に使う、杉の無垢板の加工をお願いして いる
木古内町にある岡田木材さんへ。こちらは楢やニレなど広葉樹の
フローリングなどを主に扱っている。今では珍しいオガ炭も製造。

▲とても綺麗な仕事場と、丁寧な仕事に感心する。

今回、製材して加工する杉の床も地元木古内の杉板を使う。
杉の床は柔らかいぶん脚触りがよく、とても暖かみがある。
道南杉の中でも木古内の杉は特に目が積んでいて木目も美しい。

▲綺麗に桟積みされた板が美しい。右が杉板。

建具材は、一昨年に事業を停止した播磨木材さん。4月頃までに
ストックされた木材をすべて売却処分するという事で、その前に
地元でも使ってほしいという事で、低価格で出してくれます。
今回は主に蝦夷松を厳選してきました。

▲銘木や良材など掘り出しものがあるので是非皆さんも!

そして家具材は、厚沢部にある広葉樹専門の鈴木木材さんへ。
こちらでは広葉樹の板の展示販売や加工、家具の製作までも
相談しながら手掛けてくれる。ギャラリー仙人では、各地から
厳選された多くの本物に出会えます。

▲鈴木木材事務所と、ギャラリー仙人。

ギャラリーや木材展示場、蔵を移築したトイレ棟や社長の自宅等
私が師事していた小澤建築研究室で設計し、よく現場にも通った
想い出深い鈴木木材さん。独立後もお世話になります。

大屋根の家のダイニングテーブルは、鹿部という土地ならではの
とっておきの材料を使わせていただく事に。お楽しみに!!!
その他、キッチンや手洗いなどは楢材などを選定。

▲右が木材展示場、奥が蔵を移築再生したトイレ棟。

そしてこちらにも鈴木さんお手製の、コンテナを改造して作った
バイオ乾燥機なるものがあります。三上さんも鈴木さんも同様に
人口乾燥のように木の細胞を壊さないよう、 ゆっくりじっくり
愛情を掛けているので、その木材にも優しい表情が現れます。

▲右が研究棟、左が乾燥室。中も板張りで気持ち良いサウナのよう。

今回は、木材だけでも5社を適材適所に使い分けております。
実際に使う木材を選定し、さらに実施設計に反映させて行きます。
なかなか本物の木に触れる事の無いご時世ですが、ローコストでも、
手や脚で触れるところには、地場の無垢の木を多く使っていきます。

そして大屋根の家の暖房にはサーマスラブという土壌蓄熱暖房に、
薪ストーブ も使い、南側に太陽光を蓄熱する土間があったり、
十和田石で作るお風呂、ウッドデッキやドックランのあるお庭等
盛りだくさんの楽しい内容になります。

そして実施設計図を元に、見積りをとりましたが予算もオーバー。
オーバー分の減額調整と設計変更を繰り返し、繰り返し、 各業者
さんの協力も受けながら、そしてお施主様にも納得を頂きながら
一昨日無事に請負契約に至りました。

▲左が請負契約書、右が93枚に及んだ設計図書。

ここへきて大雪が続き、雪解けがの気配がまだ感じられませんが、
3月の着工へ向け、しっかり準備をしていきます。

つづく。