まちづくりシンポジウム  横濱建築祭2014

2月28日から始まった横濱建築祭2014に参加してきました。
内藤廣さん設計の横浜らしさを出した馬車道駅をメイン会場にして、関内ホール、
横浜創造都市センターなどで開催されました。

▲迫力のドーム型天井になった馬車道駅の改札口。

改札口の上の円形ホールには神奈川の大学の卒業設計や、建築家の写真や模型など
かなりのボリュームで展示されている。

▲改札上部のコンコース、右が建築家の展示風景、奥に卒業設計が見える。

壁には元々この場所に建っていたという横浜銀行旧本店から譲り受けた金庫の扉が
掛けられ、その土地の記憶をしっかり残している。

▲本物のレンガ積みの壁に本物の金庫の扉が掛けられ、遺跡のようになっている。

そして、5つあるうちのメインシンポジウムを聞きに関内ホールへ。

▲『まちの品格』まちは誰がつくるのか?地域固有な景観による、まちづくりの作法。

ここでは、連健夫氏が英国建築都市環境委員会CABE(comission for architecture
& the built environment) を取り入れ、良質な建築や美しい街並をつくるための、
デザインレビューを行なっていこうと話し、日本の現状でもある確認行政ではなく、
許可行政にしていかなければ大きく変えて行く事が出来ないと問題提起していた。
既存の制度や規制といった枠を少し変えるだけで、都市の骨格を変えられる可能性
がまだまだあると感じた。また、まちの品格は最後の仕上げ に関わる建築家にしか
出来し、その前段で関わりを大きくもつコミュニティアーキテクトとしての役割を
発揮して街を変えていかなければと思う。
その後、ガス灯の灯る馬車道にでてCROSS×CROSS  PARTYへ。

▲イギリスから海を渡ってやってきたガス灯の明かり。

会場は大正11年に建てられた旧川崎銀行横浜支店 を、平成元年にファサードを
復元して建てられた、歴史的建造物の再生の一手法を示した先駆けでもある日本
興亜馬車道ビルにある地下1階の19th CLUB へ。

▲銀行建築らしく重厚に作られた空間と美味しい酒と肴に酔いしれる。

翌朝、象の鼻パークや赤煉瓦パークや横浜の伝統建造物を見て歩き、 シンポジウム
会場である横浜創造都市センターへ。

▲1929年に第一銀行横浜支店として建てられた。

1929年に第一銀行横浜支店として建てられ、2004年に横浜市が推進する
「都心部歴史的建造物活用事業」の第1号として移築、再生された建物で、ここを
舞台にしてBankART 1929 Yokohama などが生まれている。
現在はアーツコミッション・ヨコハマを中核機能として、クリエーターやNPO、
市民や企業、学校などの創造活動支援などを行なっている。

▲ヨコハマ創造都市センター内部のYCC Cafe 。

この地下で、「歴史・文化を継承しつつ街を賑やかにする手法」としてまちづくり
シンポジウムに参加させていただきました。横浜でまちづくりをしている方達と、
函館で歴史的建造物と向き合う建築家の座談会方式でのシンポジウムでした。
函館の歴史的建造物の現状を写真と共に説明し、続いて「常盤坂の家」 での実践を
20枚くらいのスライドで説明させていただきました。

▲まちづくりシンポジウムの様子。初シンポジウムで緊張気味の私。

今回の座談会で分かったのは、横浜やこの馬車道周辺も今では想像できないほどに
荒廃していた時期があったが、横浜らしさを活かしながら地道に一歩一歩地元の
商店や建築家、クリエーターなどの努力でまちづくりを進め現在の姿があると言う。
函館と同じように伝統建築物ですらどんどん壊されていく状況もあるようです。
行政が壊されそうな建物を買い取って運営をNPOに委託したり、オーナー向けには
芸術不動産リノベーション助成 を出し、入居者向けにアーティスト・クリエーター
の為の事務所開設助成が行なわれているようです。開港と共に港が栄えた横浜と
函館には多くの共通点もありとても刺激を受けてきました。そして、来場者の中に
横浜のまちづくりの仕事をしているという函館出身の若手2人に出会ったり、函館
観光大使の紀あささんに出会ったり、東京在住で常盤坂の家の購入を検討していて
『カイ』という雑誌に常盤坂の記事で載ったのを偶然見て知り合ったSさんにお会い
でき、終わってから水谷さんと紀さん、Sさんと一緒に馬車道駅に設けられた茶室で
武者小路千家さまのおもてなしで、久しぶりに一服いただいた後、シンポジウムで
パネリストとしてご一緒した杉浦裕樹さん(さくらWORKS代表)がリノベした
シェアオフィス『さくらWORKS -関内-』とファブラボを見学させて頂きました。

▲奥に3DプリンターなどFabLabの機能がある。

杉浦さんはシェアハウスも運営したり、この場所でよこはま経済新聞を展開したり
様々なアクションを起こし人や情報を動かし交流を促している。こうした一過性の
イベントでは終わらない活動を起こして行くのがまちづくりでも欠かせない。

▲ちょうど女性起業家の交流会が行なわれていた貸しスペース。

そして最後は、防火帯建築と戦後復興住宅の役割を果たした吉田町第一名店ビルへ。
こちらも同じシンポジウムでパネリストだった佐久間衛氏が保存活用された事例。
いわゆるコンクリ長屋と呼ばれる防火帯建築は、街区を囲むように建てられている
のが横浜の特徴だとか。塗料店で一番安い赤の塗装が意外や街に馴染んだという。

▲伊勢崎モールのすぐ脇に位置する吉田町第一名店ビル。

横浜らしい、その場所にしかないものや特徴を活かしながらのまちづくりの魅力が
人を呼び込み 、近年ではBarや設計事務所などの入居が増え賑やかになっている。

その場所にしか出来ないまちづくりは地方都市が今後進めて行く上では欠かせない。
函館には、横浜のようにまだまだ魅力ある過去の遺構が多く残っているので、それを
壊して作り替えるのではなく、上手く特徴を活かして活用していかなければ、函館の
アイデンティティは益々失われて行く。みなとみらい21などの大きなまちづくり
ばかり目が行きがちだが、地元商店街などが地に足をつけ地道にまちの資源を活かし
活動するのが、地域固有の景観を守りながらまちづくりをする作法だと気がついた。
「まちづくりは一日にして成らず」である。

今回、お呼びかけをいただきました公益社団法人日本建築家協会関東甲信越支部
神奈川地域会の皆様、本当にありがとう ございました。 とてもとても良い収穫の
あるシンポジウムでした。