2017年12月1日、函館の冬を彩るクリスマスファンタジーの幕開けと共に、「大三坂ビルヂング」がオープンした。大正10年に旧仁壽生命函館支店と付属土蔵として建てられた伝統的建造物部分を小さな複合商業施設として、その裏手に昭和51年に建て増された住宅部分をゲストハウスとしてリノベーションした建物で、2016年11月から改修を進めてきた。前所有者から活用を前提にと、共に活動をする天然酵母パンTomboloの苧坂を通じて箱バル不動産に相談があり、代表を務める蒲生と三人でお話を聞きに行ったのが2015年12月のこと。大三坂の中腹にあり建物の角を象徴的に丸くしメダリオンなどの装飾が特徴的で、全国で活躍し函館にも多くの名建築を残した関根要太郎・山中節治の設計ではないかといわれ、ユーゲント・シュティール様式の白いスタッコ塗りの事務所棟が土蔵と対をなす佇まいはひと際目を引く誰しもが気になる建物であった。この大三坂でこの建物が未来に向けてどう活用されるのが良いかを考え、開港当時坂下に「大三」という屋号の郷宿があったことや、日本の道百選でもありお寺や教会など世界の文化が交わる事から、旅で訪れた人と地域の人が交流できる場所になればと提案した。蒲生商事で建物を引き継ぎ、箱バル不動産でプロデュースを行った。テナントには街やこの建物に想いを共にする仲間が集まった。事務所棟1階にはアメリカンレストラン『She told me』、土蔵にはキャンドルの製作体験のお店『710candle』,事務所棟2階にはシェアオフィス『函館大三坂オフィス』、それと箱バル不動産の事務所が入居する。山建中川組で工事を請負い、建物の状態は想像以上に悪く難工事となった。事務所棟は半分をスケルトンにし腐った土台や柱・梁まで入れ替える部分が出てきた。外壁のメダリオンなども修復し、屋根も全面吹き替えとし、土蔵は蛇腹も含め下地から組み替え石州瓦を新しく葺き替えた。内部は腰板やモールディングも丁寧に取り外し、断熱を入れてから極力元の部材で修復している。大規模な改修となったが、それを感じさせない古くて新しい建物に生まれ変わった。
『She told me』内装デザイン:trim tab
『710candle』内装デザイン:woodmake工房
『函館大三坂オフィス』内装デザイン:brant&sons
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