『カフェ プランタール』旧函館ドック外人住宅リノベーション

『カフェ プランタール』(旧函館ドック外人住宅リノベーション)
旧函館ドック外人住宅は、函館ドック株式会社がギリシャ船を造船した際、その船の検査員として呼んだギリシャ人が函館に滞在する為、昭和31年 会社の施設として時任町に木田建業によって建てられた4棟の社宅である。 この一帯は大正期に文化村と呼ばれ東部の住宅地開発の重要な地域だった。 奥の2棟は解体されたが、道路側の1棟が昭和61年より平成26年まで フランス料理店「ラ・メゾン・ドゥ・カンパーニュ」として使われていた。この建物を活用してくれる方へ売却したいとの話から大西監督が購入した。外構は樹齢60年に及ぶ唐松が林立していたが、大部分が根腐れを起こし 伐期を迎えていた。創建当時の内装は板壁の上にクロスが貼られていたり、少し手が加えられていた。また、ボイラー室・女中室であった部分が厨房 とされており、その厨房周りや居室床など随所に痛みが出ていた。 この建物をさらに未来へと引き継ぐ為、基礎の補強から耐震補強といった 根幹から、当時の面影を残しながらも、さらに豊かな空間へとの想いからこの計画が始まった。当時使われていたナラの床板、壁に貼られていた松 の羽目板は一枚一枚丁寧に解体し、木肌を痛めぬように塗膜のみを剥離し 新たに仕上げている。度重なる改修によって窓枠などに塗られたペイント なども丁寧に剥離し木目を生かして当時のように復元している。 居間・食堂だった部分の天井はより開放感を得る為、トップライト目掛け 吹き抜けとし、寝室側の壁を抜き西面に大きな吐き出しの窓を新設して いる。厨房は使い勝手を良く導線を整理し、厨房というより住宅らしさを 思わせるキッチンを造作し、トップライトの光も取り込み明るく透明感を 出している。浴室は当時のオリジナルを残し設備を入れ替え修繕している。外構の唐松は伐採し根を起こして、表土を入れ替え周囲を菜園としている。建物外周には、伐採した唐松を枕木として製材し敷き詰めている。 プランタール オーナーで映画監督の大西功一氏は、東日本大震災の大規模な物流寸断をキッカケに、自分たちで 食べるものを自分たちで作る菜園付きの店を映画制作の傍ら構想してきた。 そして旧函館ドック外人住宅はオーガニックな菜園と一体になった『カフェ プランタール』として生まれ変わった。