函館視力障害センター居室棟「茶の間プロジェクト」

国立障害者リハビリテーションセンター自立支援局 函館視力障害センターは視覚障害者の自立と社会参加を
支援するため、昭和39年に北日本を主な対象として開設されました。その施設への入所支援として設けられた
居室棟は当初3人部屋で計画されました。近年、入所者の減少から個室として利用されるようになりました。
その中でも2階にある1室は、入所者同士が長年談話室のように利用し、交流を深める場になっていました。
短い期間ではあるがここが皆で生活をし、学び、共に語り合いう場所でもある。そこに気軽にテーブルを囲み、
お茶を飲んだり、勉強もできたり、会話もできる家族には無くてはならない、まさに日本の家族の原点でもある
「茶の間」のような場所を 用意する創立50周年記念事業の一環としてプロジェクト。
感覚が鋭敏な障害者の為、自然素材による調湿性能や空気の浄化作用による室内環境の改善、低温乾燥による
無垢材からのフィトンチッドによる消臭・脱臭効果、抗菌・防虫効果やリラクゼーション効果、また火災時には
有害ガスを出さない避難上の安全性、土に還るという環境負荷の少ない循環性、また自然素材の手触りや感触、
素材の色味の配慮など、時間を掛けじっくりと施設の方々と計画を練ってきました。
茶の間に使った木は、地場の材木屋さんから北海道産の木を直接仕入れ、じっくりと低温乾燥したものを使い
ました。床には浮づくりを施し、目が見えなくても木の持つ本来の素材感や木目などを手や脚触り、香りなど
で味わえるようにしました。また、その加工をセンターのみんなでワークショップを行ないながら施しました。
建材も土に還る自然素材を中心に安心できるものを選びました。センターのあんまクラブと見学に訪れた学生
さんの交流会を兼ねたお披露目会では、瀬棚町で自然農法によるお米作りをしている秀明ナチュラルファー
北海道さんよりご提供頂いた無農薬の米ぬかで床磨きをして頂きました。皆が手を掛けることで愛着が生まれ、
次の50年後まで大切に使い続けていただければと心から願っております。この茶の間プロジェクトを主導
てくださった視覚障害センターの稲葉様を始め、様々な人の繋がりとご協力の元で無事に完成することが出来
ました。この場を借りて御礼申し上げます。