このところ続いた土いじりも一段落したので、少し木に触れる事に。
写真に見えるこちらの板壁は大和張りと言う張り方で、他の板壁より
特別に幅が広く表情の良い、杉の木の板目を使っている。
他の板壁は鉄釘なのに対し、こちらは全て真鍮釘で打たれており、
常盤坂の家の中でも最も格が高い壁になっているのが分かる。
ここは特別慎重に板を剥がしてゆく。真鍮釘も大事に保管して
また、新たに再編集するように活用する。
そして、この板を留めている横に走る木は、横貫と言う部材で、
常盤坂の家では、この横貫が柱を貫通し、柱と柱を繋いでいく
「通し貫 工法」という伝統工法で壁が組まれている。
通し貫は、柱と貫の貫通部が潰れることで、地震による揺れを
吸収する柔構造で、逆に筋交いは揺れに対して踏ん張る剛構造で、
ここでは、どちらも併用している。 当時の匠のこだわりが分かる。
続いて、中の間にある構造上、効いていない柱を抜く作業。
まず、周りに付いている壁を解体してゆく。
釘を打ちつけた方に、反対から叩くと釘が抜け簡単に柱は外れた。
今回のリノベーションでは、付け加えるというよりも、削ぎ落とす
というのが念頭にある。耐震補強や断熱補強といったものは付加し、
その他は、引き算の手法でデザインを固めていくことで、コストを
抑え、セルフビルドによる質の低下を防ごうと思っている。
下の写真は、道路正面にある連子格子の下の壁を中から剥いだ所。
道路から見ると、連子格子の下には「ささら子下見」と呼ばれる
板壁になっているが、その裏にはしっかり漆喰が塗り込められて
ある。函館大火の後に建てられただけあり、防火の意識もあった。
下の写真、柱の上から横に留めた長押という部材は、書院風和室
などで良く見かけるもので、上から留めるこちらは本式のもの。
昔々は構造的に柱を繋ぐものだったが、今では意匠的なものに。
本式のものは、鴨居の上に載せて上から釘で固定している為、
下に当て木をして叩くと釘が抜け浮き上がってくる。
長押は少し格のある和室に用いられるもので、常盤坂の家では
1階は事務所なので、格式を崩す意味でも長押は外す方が良い。
残すところ、削ぎ落とすところのバランスも引き算のデザイン。
こちらは、土台と基礎の水平をチェックしている様子。レーザー
の赤いラインからの高さを計りチェックしていく。
地盤はしっかりしているので、狂いはほとんどないが、大黒柱の
周辺が荷重が掛かるので、少し沈んでいた。
さあ、いよいよ基礎補強工事へと続きます。