第51話:現場公開〜引っ越し

年明け早々の引っ越し宣言から、気持ちにもようやく焦りが出てきました。
引っ越し前に、現場公開も出来ればやりたいものの、そんな余裕があるのか、
不安になりつつも2014年もスタートしました。2階はほぼ一区切りしたので、
1月末からは1階の床を進めました。住みながら1階を進めるにしてもある程度、
荷物を入れられるように床下地まででも張っておきたいところです。

▲キンキンに冷えた土間の上での仕事が続きます。

1階は25帖ある細長いワンルームの空間を手前から打合せスペース、オープン
キッチン、事務所と3つのスペースが連なります。床はベタ基礎で打った土間に
なっていますが、冬場は底冷えしますので、この上に床を上げ断熱もします。

▲床の下地材にも廃材を使っています。

3つのスペースの真ん中の部分には、お茶出しも出来るようにオープンキッチンに
なりますが、いずれここでカフェも出来るようにとも考えています。

▲手前の下地が切れている所は、一部床を下げるようになっています。

床の下地を組むだけで約1ヶ月。小根太は廃材の柱を縦に丸鋸で裂いて作ったり、
スペーサーの楔をつくったり、製材にも時間が掛かってしまいました。

▲時間が掛かりましたが、我ながら良い床下地が出来上がりました。

そして、床には新聞古紙のセルロースファイバーの断熱材を使います。蟻が嫌いな
ホウ酸が含まれていたり、床下の調湿もしてもらえて安心です。

▲セルロースファイバーならしっかり隙間まで入り込みます。

断熱材が入ると、防湿フィルムを敷いて行きます。

▲冷たかった足元が急に暖かくなりました。

そして、バタバタと床に構造用合板を敷いていきます。釘を打つ時間がなかったので
取りあえず4隅だけの仮敷きです。

▲床を敷くとホッとします。薪ストーブも足元にアンカーをセットしました。

そこに三上製材さんから4.5メートルもある道南杉の板が届きました。

▲特別に用意してくれた道南杉のこの板は巾も30センチ以上あります。

長い杉板を木取り一人でようやく2階に運び入れ、TV台兼ベンチを設置しました。
窓と窓の間がTV台になります。この窓の外は目の前にナナカマド並木が広がり、
窓辺をベンチにして外を眺められるようにしました。ベンチの下は欄間を入れて
収納になります。窓の上にも杉板を廻し、上は飾り棚になります。

▲さすがに2間半の長さの板は迫力があります。

ここまでで、気がつけば3月も半ば。現場公開まで残すは1日となっていました。
そして前日の北海道新聞の朝刊に、常盤坂の家の現場公開の記事が大きく載りました。
1階はリノベーションの途中を現場公開する事で、古民家の問題点とその克服方法や、
どのように工事を進めているのかを見ていただき、2階はリノベーションによって
どのように生まれ変わり、どんな暮らしになるのかを感じてもらえればと思いました。

▲2014年3月14日の北海道新聞の朝刊。

2階にはまだ家具がないのでなかなか生活感がでないので、BOTANの加藤さんに
常盤坂の家をお花でアレンジしていただきました。

▲引っ越したらご近所になるフローリストの加藤さん。センスが良いのでアレンジはお任せ。

現場公開を前に、急ピッチでの準備が続きました。掃除の時間もなく困っていたら
池見石油の石塚社長がお手伝いにと、夜遅くまで窓や階段など家中をピカピカ に
磨いてお手伝いして行ってくれ本当に助かりました。

▲工事中から酷く汚れていた窓もお陰様でピカピカになりました。

翌日、現場公開当日も朝から10時のスタートギリギリまで準備を進めました。
どのくらい来られるかという不安もありましたが、10時前から外でお待ちして
いた方も居られ、どんどんと見学にいらっしゃいました。皆さん、古民家が古材を
使ってここまで良くなるのかと、驚いて見て行かれました。価値観が変わったと、
一度来てから友達や旦那さん、おばあちゃんなど連れて再度来られる方が続出。

▲初日の様子。スタートと同時に絶え間なく見学にいらっしゃいました。

初日は最後の見学の方は20時過ぎまで居られ、盛況に終わりました。
2日目は、初日以上に更に見学の方がいらっしゃいました。その中には、この家を
私に売ってくれたおばあちゃんの姿まで。涙しながら、家の再生された姿に喜んで
下さり、家を住み継ぐという実感からとても嬉しい気持ちになりました。

▲2日目の様子。窓辺に居られるおばあちゃんが前所有者。

バタバタと慌ただしさの中、無事に現場公開も終わりました。ご芳名いただいた方と
記憶をたどると170名以上の方にお越し頂き大盛況に終わりました。 公開の翌日
以降も、当日には見に来れなかった方が多く訪れていただきました。
予想以上の反響の大きさに、改めてやった意義があったと思いました。これを機に、
少しでも多くの古き良き時代の建物達が活用され、次の世代に住み継ないで いって
もらえれば函館らしい街並も残っていくと思います。多くの方に、常盤坂の家の
ような時代の建物の魅力が伝えられて良かったです。現場公開時点の写真を何枚か。

▲1階には常盤坂の家の写真や資料を展示しました。
▲真ん中には、常盤坂の家を買った時からの写真を時系列で展示。
▲1階のトイレにも綺麗な一輪挿しが。
▲新旧の階段部分にも鮮やかなグリーンが絡まりました。
▲2階居間には、取りあえず頂いた桐箪笥にちゃぶ台をのせて置きました。
▲2階の小さな書斎も可愛いアレンジです。
▲居間のTV台 兼 ベンチ。道南杉のフレームで更に窓辺が強調されました。
▲居間からキッチンを見る。
▲古材で組んだキッチン。グリーンの具合がまた素敵です。
▲寝室を見る。奥には池見石油さんで代理店のルイスポールセンのスタンドを借りました。
▲寝室から居間を見る。左の窓が浴室からの明かり取り、右下の窓が光井戸。
▲天窓からの光りが何とも気持ちの良いお風呂。

そして、現場公開の前日に水道を開栓する際、バルブが破損していて開栓できず
困ってましたが、 大石さんの知恵と経験からバルブ手前をドライアイスで凍らせ
バルブ交換する事で水道が開栓され、なんとか水が使えるようになりました。

▲水が出てこんなに喜ぶのも初めて。大石さんには最初から最後までお世話になりました。

無事にライフラインも使えるようになり、繁工務店の西村さんと妻の3人で
3月22日に引っ越しをしました。トラックで3往復して荷物を運び入れました。

▲トラック第1弾。まだ雪の残る中の引っ越しとなりました。

アッという間に、家の中は荷物だらけになりとたんに生活感が出てきました。

▲引っ越しの日の様子。生活用品でトラック1台半。
▲事務所の荷物で更にトラック1台半。

事務所の荷物の大半は、廃材なんかで家に作り付けてあった木の山でした。
その廃材で本棚を造り付けながら、荷物を納めていきます。本棚の場所だけ
引っ越し前に塗装を施し、天井に廃材の杉板を張って仕上げておきました。

▲持ってきた廃材で本棚を作るも、すぐに一杯になってしまいました。

まだまだ落ち着くまで時間が掛かりそうですが、2年半のセルフビルドの末に
ようやく常盤坂の家での生活もスタートできました。ここまで支えてくれた家族、
師匠や友人、関係者の皆様に本当に感謝しております。ありがとうございました。
仕事と生活が落ち着いてから徐々に1階の残った工事も進めていきます。
尚、常盤坂の家は、お申し付けいただければいつでも見学いただけます。

▲本日、近所の公園デビューを果たした娘の菜奈(1歳4ヶ月)。坂道も歩けました。

今後とも、常盤坂の家を宜しくお願い申し上げます。