第4話:世界初?!の放熱する壁

浮づくりで暖かみのある床も仕上がり、続いていよいよ暖房工事に入ります。
茶の間ではPS工業の「PS+O」という放熱器による対流式の暖房方式をとりました。
茶の間のある居室棟は、全館が真水を循環させる温水の蓄熱暖房になっております。
今回は、窓を塞いでいた大きな蓄熱ユニットを撤去して気持ちの良い縁側のような
空間を用意するのと、より安全な暖房形式に切り替える目標がありました。

▲曲がりの配管を加工する池見石油店の山本さん。

床暖房やパネルヒーター等いろいろな検討を重ねましたが、スチール製の暖房器具
では温水で錆びるので銅製の安価なものを探し、「PS+O」に行き着きました。
こちらは主に床下の放熱器として使われるものですが、それを今回は誘導手摺と、
腰壁による放熱する壁という複合的な意味を持たせる事で採用になりました。また、
銅の質感は赤身の杉にとても合うので違和感なく溶け込みます。聞いた所によると、
床上で居住空間の主暖房として使われるのは初めてという事でしたので、 自動的に
こちらは世界初?!の試みとなった訳です(無理矢理)

▲「PS+O」の温水が通るジョイント部分をハンダで繋いでいきます。

茶の間の入り口側を除き、コの字に「PS+O」を設置しました。

▲見た目はタワシのようですが、真ん中を温水が走ります。

空いた時間を利用してもらい腰壁に張る板の塗装ワークショップを 行ないました。

▲コストカットと茶の間への士気向上を目指し出来る事は、お手伝いしてもらいます。

設置された「PS+O」の上に西村棟梁が腰壁の下地を縦に組み、上には壁から
3センチの隙間を空けて手摺を設置し、下地にモイスを下張りします。

▲縦下地の下端にもモイスが張られています。

この腰壁が「PS+O」から出っ張ることで、利用者さんもつまずく事はありません。
腰壁の裏の空間には熱溜まりができ、腰壁のモイスが蓄熱して放熱してくれます。
壁と手摺の隙間のスリットからは、上向きに暖かい空気の自然な対流がおきます。
「PS+O」を使いながら腰壁全体が暖房のような役割を兼ね備えてあります。

▲手摺の隙間は、指も入るので手摺が握りやすい。

腰板は、弱視や色盲などの方達が色や壁とのコントラストで床と壁の境や、壁の
存在を分かり易いように4色で塗り分けている。

▲自然塗料で、とてもカラフルな壁に仕上がった。

框の段差の始まりの部分に、手摺の上に手摺棒を取り付け分かり易いようにした。

▲手摺棒は道産のホオの木。

そして、冷たい印象だった玄関の引き戸も少し明るい若草色に塗り替えました。

▲若草色で枠と戸を塗る成田塗装さん。

さらに、踏込みの部分にはリノリウムという植物などの天然素材で出来た土に還る
マーモリウムタイルを敷いて行きます。利用者さんによっては、見える色が異なる
こともあり、またコントラストを付けるのにいろいろな色を差し込みます。

▲色は多数決で決まった深海のようなブルー。色も空間にハマっています。

そして、いよいよ「PS+O」の試運転。温水が通るとすぐに放熱がはじまり、
上のスリットから早くも、暖かい自然な対流が起きてきました。部屋の断熱も
しっかりしてあるので、すぐに部屋が暖まりました。まずは大成功です。

▲PS+Oの暖かさを体感する稲葉係長と、池見石油の山本さん。

道産の栗の木の板に、クルミの木で「茶の間」を象った表札も設置されました。

▲全盲の方でも指先の感覚で触ると、茶の間と分かる表札。

更にテレビ台 兼 下駄箱 兼 ベンチという欲張りな設計のものが取り付けられました。
天板は道産のイタヤカエデ、箱は道産の栓の木、下駄箱は水に強い道産のホオの木
を使い分けています。

▲こちらは箱の出っ張りと、段差を知らせる2本の手摺棒を設置しました。

まずは手摺の案配を支援課の職員の方達に確認してもらい固定しました。

▲手摺棒が2本並ぶとブランコのような感覚です。支援課の方と利用者さん。

こうした手摺などは視覚障害の方にとっては命綱になりうるものです。
ほんの少しの気配りですが、とても大切な部分ですね。

さて、いよいよ『茶の間プロジェクト』 もクライマックスに近づいてきました。
つづく。