第12話:手仕事という痕跡

大屋根の家も壁のボードを張り終え、窓台の取り付け等
大工さんの造作工事が始まりました。

▲唐松の窓台が取り付けられた北側の雑木林を望む窓。

世の中では既製品の建具や枠等をただ取り付けるだけの仕事が
ほとんどですが、大屋根の家は、木枠なども大工さんの手仕事
によって仕上げられてゆきます。

▲カンナで木枠を仕上げる繁工務店の西村棟梁。

クロークや押入等の間仕切りや棚なども、外壁にも張った地元の
唐松材で造っていきます。ベニヤ等で簡単に造られがちな部分も
地元の木と大工さんの手仕事で丁寧に仕上げます。

▲三上製材の道南唐松材で造った寝室のクローク。
▲2階客間の押入。こちらも唐松の棚。

キャットウォークは壁のクロスを張る前に、塗装で仕上げます。

▲こちらの猫用の窓台も唐松材。

そして現場以外でも、大屋根の家の為の製作が始まっています。

杉本洋鍛冶工房ではテーブルの脚や、サインなど製作しています。

▲ダイニングテーブルの脚を組み立てる杉本さん。

杉本さんの手が掛かった鉄には、冷たい鉄のイメージは全く無く、
魂が吹込まれ躍動感のある鉄に生まれ変わる。

▲鉄を曲げながらサインを試作していく。

厚沢部の鈴木木材さんでは、キッチンの天板やダイニングテーブル
洗面台の板を木取りし、接ぎ合わせを進めている。こちらの材料は
鈴木木材さん特製の低温乾燥の窯でじっくり乾燥させたもの。
高温乾燥とは違い、細胞も痛めず、樹木が持つ本来の効能を最大限
引きだしてくれる、木にも人にも環境にも優しい 。

▲こちらがダイニングテーブルに使う取って置きのとある板。

まずはキッチンカウンターを接ぎ合わせしていきます。

▲家具職人の上杉さんが手早く接いでいきます。

板の木端に雇い実(やといざね)の溝を突き、たっぷりの白糊を
つけて、実と一緒に板を合わせていきます。

▲道産の楢(ナラ)3枚接ぎのキッチンカウンターになります。

板を合わせると、すぐにハタガネで綴じていきます。

▲締めてノリを拭き取っていきます。なんとも手早い凄い職人技!

こうして一日乾燥させてから、600番までヤスリ掛けをして
手塩に掛けて仕上げていきます。

▲こちらは更に大物。4枚接ぎにする道産楢材の流し台。

こうした広葉樹のカウンターなどは、とても存在感があるので
大屋根の家に来る日が楽しみでなりません。

そして現場では、階段の製作が始まりました。

▲大黒柱を彫り込み、段板を取り付けていきます。

大屋根の家の階段は、大黒柱を回るようにして2段の回り階段が
付いてから、蹴込み板の無い開放的な側板階段になります。

▲一段目の框を組み、ネダレスの上に杉のフローリングを張る。

続いて2段目の取り付け。こちらは棟梁おすすめの斜め張りに。

▲間に斜め張りを挟むことで、エッジが効いて気が引き締まる。

回りが出来ると、側板階段の前に2階ホールの手摺を刻む。

▲手摺の親柱を刻む西村棟梁。梁に長ホゾ差し込み栓打ちとする。

親柱を建て、手摺桟を両端大入れとし、やり返して楔締めにして
忍び釘打ちとし、親柱にはホゾ差しする。随所に伝統工法による
大工 さんの技も織り込みます。

▲両端に大入れしてやり返す。鴨居などに用いる伝統工法。

最後に手摺カウンターをホゾに落し込み、ダボで留めて固定。

▲横桟をランダムに組み合わせた手摺。

手摺を付けてから、側板階段の墨付けをして刻んでいきます。
こちらの階段も知内産の杉板で組んでいきます。

▲トリマーで段板の穴を掘り、ノミで角を落としていきます。
▲段板を一段づつ合わせしていく。

刻みが終わると、側板と段板を組んでいきます。

▲良い締まり具合で組み上がりご満悦の阿部さん。

組み上がった階段を、そーっと滑らせながら嵌め込みます。

▲綺麗な杉の階段も設置完了。

そして最後に階段の手摺板に手掛かりの溝をつけ、トリマーで
R面をつけヤスリ掛けで仕上げます。

▲トリマーでR面を取る西村棟梁。

手摺を設置して階段が完成。力強い大黒柱の回りを優しい杉で
組まれた階段と手摺が回ります。こうして手仕事による痕跡を
残すことで、住み手も作り手も大屋根の家に愛着が 生まれます。

▲唐松の大黒柱を回る階段。

そして、いよいよ内装と外構工事が始まりました。
大工さんによる造作もまだまだ続きます。

つづく。