第9話:森の中の白い木箱

上棟式から早いもので1ヶ月が過ぎようとしています。
大屋根の家では、外壁の唐松の板張りが進んでいました。
無垢の板はサイディング等とは違い、生き物のように一枚一枚の
素性が違うので、 しっかり吟味しながら張っていきます。

▲連休明けにようやく周りの枝に葉が付き始めた。

縦張りなので、長手方向で継ぎ足しになるところなどは、斜めに
勾配をつけて水を返すように継ぎ足していきます。

▲やはり良い仕事には手間が掛かります。

普通の外装などでは2、3日で張り終わるのですが、天候に
恵まれなかった こともあるのですが、2週間弱を要しました。
全てが張り終わると、板の下端のレベルを出して行きます。

▲霧に包まれる大屋根の家。鹿部ではこの時期特有のものらしい。

そして最後に板の下端を同じ高さで切り揃えてゆきます。

▲最後の一切りは緊張の瞬間です。

唐松の板を張り終えると、サッシと目板、サッシと水切りとを
変成シリコンでコーキングしていきます。

▲窓の上端も、水切りが良いように斜め切りしてある。

とても手間が掛かった外壁張り工事も完成し、棟梁の西村さんも
達成感を感じながら、いいね〜と喜んでくれるのが、また何より
嬉しいことです。そしてそんな大工さんから私にバトンタッチ。
この唐松を塗装で仕上げていきます。

▲大工さんが苦労して張った唐松の外壁とても素敵です。

外壁の塗装は、最後の最後の見積り調整で カットしていたので、
カットした私自ら、仕上げる事になりました。
唐松はとても腐りにくい木なので、塗装はいらないのですが、
木が日焼けし徐々にシルバーアウトしてから、やがて 黒ずんで
いく過程を味わいとして好しとするかで、それぞれ違います。
施主の好みや建物のキャラクターで塗装することになりました。

▲いよいよ塗っていきます。

ペンキでも、塗膜が後から剥がれてくるようなものではなく、
特にメンテナンスの掛からない浸透性の防腐塗装にしました。
色は白。夏は周りの緑が映え、冬は白銀の中に大屋根が浮かび、
中の明かりが暖かい雰囲気を出してくれます。

▲一回塗りが完了したところ。とてもムラが目立ちます。

唐松は油分が多い木なので、ムラになりやすい。塗った時は
白いのですが、乾いていくと木が塗料を吸い込んで、だんだん
薄くなっていきます。 1回目だと、塗ったのか塗ってないのか
分からない位にまで薄くなってしまいます。

▲1回塗りした上から2回目を塗り重ねているところ。

ひとりだと1回塗るのに3日位掛かってしまいます。

▲2回塗り完了。写真では分かりづらいですがまだムラあり。

2回で仕上げる予定だったのですが、思った以上にムラがあり
塗料も残っていたので、更にもう1回塗ることにしました。

▲2回塗りに、上から3回目を塗っているところ。

写真では真っ白に見えてしまいますが、肉眼では3回目では
真っ白になり過ぎず、木目も見えつつ、少しのムラが自然な
風合いになり上手く仕上がりました。結局、塗装に10日。
塗り終わるとアンテナや給気口のフードなどを取り付けます。

▲アンテナの調整をする外山電工の高谷さん。

上のパロボナアンテナがBSアンテナ、高谷さんが持っているのが
地デジ用の平面アンテナになります。

▲アンテナが付きました。屋根の丁部は棟換気になっている。

アンテナが付いたところで、足場を解体していきます。
足場の解体は、建て方をして棟が上がった上棟の時と同様に
とても感動する瞬間でもあります。

▲上の三つの窓は明かり取りを兼ねた、ネコの日向ぼっこ用。
▲新緑が白い外壁に重なりとても綺麗です。
▲大屋根の軒下、化粧野地やタル木も際立って見える。
▲木製玄関ドアはクリア塗装。板の割り付けも合わせた。

色彩豊かな森のなかで白い木箱は、四季を通じてまわりの色を
映しとってくれます。

▲白い壁は、時にはスクリーンにもなる。

地場の森から切り出した丸太が、地場の製材所で製材され、
地場の大工の手で森の中に戻ってくる。そんな想いのもと
使った唐松の板は、自然とこの場所に馴染んでくれました。
ひと昔前であれば、地のもので作るのはアタリマエの事だった
のですが、いつの間にか建材ばかりに囲まれた世の中。
もっと地に足をつけ、もの作りが出来ればエコなんて言葉は
いらないと思う今日この頃です。

▲移植した夫婦桜もしっかり芽吹いてくれました。

さて外構は、内部工事が終わってからの2期工事になります。
外壁の塗装をしている間にも、中もだいぶ出来てきました。

つづく。