第8話:祝上棟!!!

ゴールデンウィークの上棟式にお施主さまをお迎えするのに、
連休に関係なく急ピッチで現場は進んでいきます。
外周壁の面材耐力壁を張り終えると、付加断熱として柱の外側に
更に断熱材を入れる為、下地のタル木を外側に取り付けていく。

▲455㎜ピッチでタル木が組まれていく。

外側に断熱材を付加することで、中からの断熱材だけではカバー
できない外周部の柱や梁などから伝わる熱欠損を小さくできる。
タル木の間に、高性能グラスウールを隙間無く入れていく。

▲ズレ落ちないよう裏にタッカーでも止めている。

断熱材を入れ終わると、透湿防水シートを綺麗にはっていく。

▲壁のシートに屋根のシートを被せ全て包んでいく。

シートを張り終えると、シートのジョイントや端部などから
隙間風や湿気が入り込まないよう、全ての端部に気密テープを
張って隙間を埋め高気密化していく。

▲屋根からのシートとも連結し、しっかりテーピングする。
▲屋根タル木などの周辺もしっかりテーピング。
▲窓廻りはブチルゴム防水テープでしっかり止水もする。

こうして、土台水切りから屋根までスッポリとラッピングされる。
そして、外壁材の準備に隣りの森町の三上製材所へ。

▲伐採した木で作ってもらった枕木も出来ていました。

冬から三上さんに吟味しながら挽いてもらっていた唐松の板を
最後の仕上げに一枚一枚プレーナーに掛けてもらいます。
プレーナーに掛けながら、建具材にも使えそうなところを更に
吟味しながら仕分けしていきます。

▲三上さんのプロの目利きが光ります^^

そして現場には、嶋崎板金さんが大屋根を葺きにやってきました。
大屋根の家の屋根は、その大きな屋根をよりスッキリ見せる為にも
軒先の見え方がとても重要になってきます。
普通に葺いただけでは、鋼板の歪みで軒先が蛇のように見えるので
捨て板という補強材を一枚いれてもらいます。

▲捨て板を取り付ける嶋崎さん。このひと手間が重要。

その捨て板を包み込むように唐草を取り付けていきます。
この唐草は屋根からの水切れを良くする為のものですが、
こちらも唐草の先端にもう一段、前垂れを付けることで、
見た目にも、機能的にも実利を兼ねたものにしています。

▲捨て板に唐草を引っ掛けていく。この前垂れに屋根を包む。

こうしてあまり気づかれないような一手間も二手間も掛けて、
ようやく屋根のガルバリウム鋼板を葺き始める。

▲浮き上がり防止の吊り子に屋根を締めていく。

煙突周りも納まり、大工さんは透湿防水シートの上に横胴縁を
流して外壁の下地を組んでいく。

▲新しい屋根が光ってみえます。

外壁には、厚さ5分、幅3寸・4寸・5寸の3種類の唐松の板を
ランダムに張っていく。幅が一定だと窓の横に細い板が入ったり、
無理に板を切りイジメル部分が出てくる。それを避ける為に、
窓脇や角から割り付け、間を ランダムに調整しながら割り付ける。

▲横胴縁に割り付けを出す設計者。ランダムほど難しいものは無い。

大屋根の家の外壁板の張り方は、張った板と板の間に目板という
細い板を打っていく『大和張り』を、逆にして目板を張った上に
板を張る『逆大和張り(勝手に命名)』 。『大和張り』の目板は、
乾燥収縮していく板と板の隙間を隠す為に打つものだが、今回の
『逆大和張り』には目板部分に通気工法兼ね揃えたもので、私の
小澤師匠のやり方に更にアレンジを加えたもの。

▲目板を張っていく大工さん。この目板の上に板を張って仕上がる。

そして、 ケントさん(ペンネーム)夫婦が埼玉から鹿部に
いらっしゃいました。今回、上棟式というメインイベントと共に、
ケントさんには、やらなくてはならない大仕事があったのです。
大屋根の家を建てるのに、この森を切り開くのに伐採した木を、
ここでの生活の暖をとる為の薪にすべく、丸太を30㎝に玉切り
して薪割りをするという初めての大仕事でした。
薪ストーブ屋さんのファイヤピット大石さんも駆け付け、まずは
チェーンソーの使い方など丁寧なレッスンを受けます。

▲左ケントさん夫婦と、実演する大石さん。

そしてケントさん、いよいよ初めての玉切り体験です。

▲初めてとは思えないくらい、ワイルドだぜ〜(笑)

続いて、大石さんの実演レッスンを経て初めての薪割り体験です。

▲初めてなのにしっかり的に当てるケントさん。

こうして、上棟式前日からケントさんの楽しい薪仕事が始まった。

棟梁の西村さんは、通気目板をどんどん張り進めていきます。

▲すのこのように組まれていく通気目板。
▲通気目板の脚元。こちらが通気の入り口になる。
▲更に窓の上も通気の入り口になる部分。
▲化粧野地、登り淀の手前が通気の出口になる。

そして上棟式当日、外壁の仕上げ唐松の板を張り始めました。

▲正面の左側から少し張っている様子。

そして大屋根の家の裏に回ってみると、前日のチェーンソーで
早速筋肉痛のケントさんが薪割の腕前を上げていました。

▲上手く薪が割れる瞬間を捕らえました。

上棟式までの実質一日半でしたが、いつの間にか薪の山が。
とても良い汗をかきながら、一本一本の薪に愛情を込めながら
薪を割っている様子は、見ていて気持ちが良かったです。

▲ケントさんが薪を割り、奥様が積み上げる。

そして祭壇が整い、関係者も集まり上棟式が執り行われました。
無事に棟上げも終わったことに感謝しながら、工事の完成後も
建物が無事であり続ける事を祈願します。

▲大屋根の家に神主さんの清らかな声が響きます。

式後は、ケントさんご夫婦が職人さんの労をねぎらい直会の場を
用意していただきました。ケントさん夫婦が、鹿部に移住して
来られるキッカケから、楽しい話しに花が咲きました。
お土産にお赤飯やケントさんの地元  川越のコエドビールなども
振る舞われ、本当に楽しい上棟式となりました。

▲職人さん達も、和気あいあいです。

お施主さんに喜んでもらう為に普段、現場で頑張ってくれる職人
さんも、なかなかお施主さまの顔をみる事が少ないのですが、
こうした機会を用意して頂けると職人冥利に 尽きると思います。

ケントさんご夫婦、素敵なおもてなしをありがとうございました。

そして、最後に再び喜んでもらえるよう、皆と力を合わせて
頑張って参ります。

つづく。