ゴールデンウィークの上棟式にお施主さまをお迎えするのに、
連休に関係なく急ピッチで現場は進んでいきます。
外周壁の面材耐力壁を張り終えると、付加断熱として柱の外側に
更に断熱材を入れる為、下地のタル木を外側に取り付けていく。
外側に断熱材を付加することで、中からの断熱材だけではカバー
できない外周部の柱や梁などから伝わる熱欠損を小さくできる。
タル木の間に、高性能グラスウールを隙間無く入れていく。
断熱材を入れ終わると、透湿防水シートを綺麗にはっていく。
シートを張り終えると、シートのジョイントや端部などから
隙間風や湿気が入り込まないよう、全ての端部に気密テープを
張って隙間を埋め高気密化していく。
こうして、土台水切りから屋根までスッポリとラッピングされる。
そして、外壁材の準備に隣りの森町の三上製材所へ。
冬から三上さんに吟味しながら挽いてもらっていた唐松の板を
最後の仕上げに一枚一枚プレーナーに掛けてもらいます。
プレーナーに掛けながら、建具材にも使えそうなところを更に
吟味しながら仕分けしていきます。
そして現場には、嶋崎板金さんが大屋根を葺きにやってきました。
大屋根の家の屋根は、その大きな屋根をよりスッキリ見せる為にも
軒先の見え方がとても重要になってきます。
普通に葺いただけでは、鋼板の歪みで軒先が蛇のように見えるので
捨て板という補強材を一枚いれてもらいます。
その捨て板を包み込むように唐草を取り付けていきます。
この唐草は屋根からの水切れを良くする為のものですが、
こちらも唐草の先端にもう一段、前垂れを付けることで、
見た目にも、機能的にも実利を兼ねたものにしています。
こうしてあまり気づかれないような一手間も二手間も掛けて、
ようやく屋根のガルバリウム鋼板を葺き始める。
煙突周りも納まり、大工さんは透湿防水シートの上に横胴縁を
流して外壁の下地を組んでいく。
外壁には、厚さ5分、幅3寸・4寸・5寸の3種類の唐松の板を
ランダムに張っていく。幅が一定だと窓の横に細い板が入ったり、
無理に板を切りイジメル部分が出てくる。それを避ける為に、
窓脇や角から割り付け、間を ランダムに調整しながら割り付ける。
大屋根の家の外壁板の張り方は、張った板と板の間に目板という
細い板を打っていく『大和張り』を、逆にして目板を張った上に
板を張る『逆大和張り(勝手に命名)』 。『大和張り』の目板は、
乾燥収縮していく板と板の隙間を隠す為に打つものだが、今回の
『逆大和張り』には目板部分に通気工法兼ね揃えたもので、私の
小澤師匠のやり方に更にアレンジを加えたもの。
そして、 ケントさん(ペンネーム)夫婦が埼玉から鹿部に
いらっしゃいました。今回、上棟式というメインイベントと共に、
ケントさんには、やらなくてはならない大仕事があったのです。
大屋根の家を建てるのに、この森を切り開くのに伐採した木を、
ここでの生活の暖をとる為の薪にすべく、丸太を30㎝に玉切り
して薪割りをするという初めての大仕事でした。
薪ストーブ屋さんのファイヤピット大石さんも駆け付け、まずは
チェーンソーの使い方など丁寧なレッスンを受けます。
そしてケントさん、いよいよ初めての玉切り体験です。
続いて、大石さんの実演レッスンを経て初めての薪割り体験です。
こうして、上棟式前日からケントさんの楽しい薪仕事が始まった。
棟梁の西村さんは、通気目板をどんどん張り進めていきます。
そして上棟式当日、外壁の仕上げ唐松の板を張り始めました。
そして大屋根の家の裏に回ってみると、前日のチェーンソーで
早速筋肉痛のケントさんが薪割の腕前を上げていました。
上棟式までの実質一日半でしたが、いつの間にか薪の山が。
とても良い汗をかきながら、一本一本の薪に愛情を込めながら
薪を割っている様子は、見ていて気持ちが良かったです。
そして祭壇が整い、関係者も集まり上棟式が執り行われました。
無事に棟上げも終わったことに感謝しながら、工事の完成後も
建物が無事であり続ける事を祈願します。
式後は、ケントさんご夫婦が職人さんの労をねぎらい直会の場を
用意していただきました。ケントさん夫婦が、鹿部に移住して
来られるキッカケから、楽しい話しに花が咲きました。
お土産にお赤飯やケントさんの地元 川越のコエドビールなども
振る舞われ、本当に楽しい上棟式となりました。
お施主さんに喜んでもらう為に普段、現場で頑張ってくれる職人
さんも、なかなかお施主さまの顔をみる事が少ないのですが、
こうした機会を用意して頂けると職人冥利に 尽きると思います。
ケントさんご夫婦、素敵なおもてなしをありがとうございました。
そして、最後に再び喜んでもらえるよう、皆と力を合わせて
頑張って参ります。
つづく。