第7話:大屋根

なかなか気温が上がらない道南の鹿部町。日向に居るとこの季節が
太陽の日差しの暖かさを最も感じる時期かもしれません。
大屋根の家は、棟上げが終わりいよいよ大屋根を掛けていきます。

▲下で棟梁が屋根タル木を刻み、順番に軒先に掛けていきます。

まずは、棟木と平行して掛かる母屋(モヤ)、桁(ケタ)に屋根タル木を
掛けていきます。大屋根の家では、軒先が1m以上出る構造なので、
なんと柱と同じ大きさの角材を屋根タル木に使います。

▲これだけの材料が並んでいくと迫力が凄い!!

風による吹き上げに耐える為にタルキックという15センチもある
ビスで屋根タル木と、棟、母屋、桁を止めていき、さらに屋根面の
剛性を高めるラフターロックという金物で 締めていきます。

▲15センチもあると打ち込むのも大変です。
▲ラフターロック金物をガッチリ止めていく大工の北川さん。

金物が全て取り付くと、屋根タル木と桁の隙間に面戸を落し込み、
さらに屋根タル木に野地合板の繋ぎのタル木を落し込む。

▲面戸、タル木を留めるベテラン大工の阿部さん。

そして、大屋根のシンボルの煙突の下地を取り付ける。

▲煙突が出るだけで、家に暖かな印象がうまれる。

屋根の下地が組み上がると、屋根面の構造用合板を張り、 透湿
防水シートを張りジョイントに防水テープを張り、通気胴縁で
押えていくが、屋根勾配がキツい ので、シートで滑る危険性が
あるので、棟から順番に張りながら下がっていく。

▲多くの工程を一度に進めていく大工さん。

7寸5分勾配の屋根は水切れも良いが、工事は危険がいっぱい。

▲水がしっかり切れるように上のシートが被さるように張る。
▲丁寧な仕事をしながら、無事に下まで張り終える。

下まで無事に張ったと思ったら、次は下から野地板を張りながら
また登っていく。大工さんは凄い体力です。

▲野地板は、三上製材さんの道南の唐松。とても腐りづらい木。

唐松の野地板の下の隙間の部分が通気層になっていて、屋根裏
に溜まってしまう室内からの湿気を逃がす構造になっている。
この通気工法にしないと、壁内部や屋根の内部の湿気が結露し、
見えない部分で木が腐ったりしてしまう。

▲頂部のスリットは、棟換気部分になる。

軒先の化粧野地を張る前に、軒裏になる入り組んだ部分の仕事を
やり易いうちに、ここで壁の間柱を建て、外壁下地の構造用合板
を張っていく。 この壁は筋交いの代りに、面材耐力壁を構成する。

▲壁を張っていくと、一気に建物のシルエットが現れる。

そして、大屋根の軒下をつくりだす、化粧野地板を張っていく。
こちらは木古内町の岡田製材さんで、道南の知内近郊の杉を
厚み42㎜、幅180㎜のに挽いて加工して頂いたもの。

▲軒先から杉の化粧野地を張り進める。

屋根通気層の入り口に防虫通気金物を取り付け、野地板を被せる。

▲軒下の屋根と壁の交わる部分が、通気の入り口になる。

屋根の妻面、けらばには登り淀(ノボリヨド)という同じ杉の板を
取り付け、それに合わせ軒先の化粧野地を切り揃える。

▲大きな屋根面の大工仕事もこれで完成。

こうして大屋根の下地が完成。大屋根の家の玄関は、この大きな
軒下をくぐり、杉の野地板を眺めながらのアプローチになる。

▲ここが玄関前の大きな軒下空間。とても豊かな空間ができた。

野地が完成するとすぐに、嶋崎板金さんが屋根板金の下地になる
アスファルトルーフィングを敷いていく。

▲息ピッタリの嶋崎板金の皆さんの絵になる一枚。
▲ルーフィングが敷き終わると、ひとまず大雨が降っても安心。

大工さんは休む間もなく、窓を取り付ける為に窓周りに気密用の
パッキンをしLow-eペアの高断熱樹脂サッシュを取り付けついく。
そして、函館では池見石油店で取り扱っている札幌のM.a.p社製
木製断熱ドアも現場に到着。木製サッシや、木製ドアは断熱性に
優れ、見た目にも暖かい。樹脂サッシに比べると、まだまだ高価
ですが毎日使う玄関ドアとして、お客様を迎え入れる玄関として
ひとつあるだけでもとても豊かな空間になります。
積雪と防犯性を考慮し、特別に内開きで作っていただきました。

▲大きな軒下にぴったり。メイドイン北海道の暖かなドア。

全ての窓が取り付き、大屋根の家の姿が徐々に姿を現してきました。

▲大きな窓の正面に、移植したシンボルツリーの夫婦の蝦夷山桜。

これでようやく雨風を凌げる状態になり、ゴールデンウィークの
上棟式をお施主さまと迎えられます。

つづく。