昨年末に本格的にスタートした大屋根の家は、
それまで煮詰めてきた基本設計をまとめ、地盤調査資料も含め、
一気に実施設計へと突入した。
基本設計時には、お施主さまからの断片的なご要望に対して、
この土地で、この場所でならどういった暮らし方が可能か 、
なんどもプランニングを繰り返しながら、お施主さまなりの
生活のストーリーを組み立てるように、カタチにしていく。
基本設計では、配置計画や採光、通風、暖房計画などなど、
様々な要素を多角的にまとめ大きな骨格を作り上げる。
実施設計と平行し、今回フラット35Sエコの省エネルギー性に
優れた住宅としてⅠ地域の省エネ等級4を取得して金利の優遇
を受ける為、検査機関に設計審査を申請する。
実施設計では基本設計を元に、構造や電気、設備や細部の納まり
まで検討し、しっかりした見積りと工事が進められるよう図面を
書き進める。この頃になると更に打ち合わせが増える。
今回は工期の関係もありプレカットの選択となり、大屋根の家の
軸組みのプレカットを担当する佐藤木材へ。
大屋根の家は、土台に米ヒバ、軸組みには米松の無垢を使って
金物工法により組み上げる。 軸組みのサイズや、窓の位置高さ、
接合方法など詳細をチェックしていく。
外壁は鹿部町の隣り、森町にある三上製材所の唐松の羽目板。
唐松特有の回旋木理という性質で捻れやすく、なかなか扱いは
難しいのですが、木目の美しさと腐朽しにくい特徴があります。
数ある板の中から三上さんは厳選したものを出してくれます。
板張りの方法も様々あり、検討を繰り返し設計していきます。
三上さんには外部のデッキ材、枕木の賃挽きなどもお世話になる。
こちらには、三上さんお手製の超エコな木材自然乾燥室まである。
更に大屋根の家の床に使う、杉の無垢板の加工をお願いして いる
木古内町にある岡田木材さんへ。こちらは楢やニレなど広葉樹の
フローリングなどを主に扱っている。今では珍しいオガ炭も製造。
今回、製材して加工する杉の床も地元木古内の杉板を使う。
杉の床は柔らかいぶん脚触りがよく、とても暖かみがある。
道南杉の中でも木古内の杉は特に目が積んでいて木目も美しい。
建具材は、一昨年に事業を停止した播磨木材さん。4月頃までに
ストックされた木材をすべて売却処分するという事で、その前に
地元でも使ってほしいという事で、低価格で出してくれます。
今回は主に蝦夷松を厳選してきました。
そして家具材は、厚沢部にある広葉樹専門の鈴木木材さんへ。
こちらでは広葉樹の板の展示販売や加工、家具の製作までも
相談しながら手掛けてくれる。ギャラリー仙人では、各地から
厳選された多くの本物に出会えます。
ギャラリーや木材展示場、蔵を移築したトイレ棟や社長の自宅等
私が師事していた小澤建築研究室で設計し、よく現場にも通った
想い出深い鈴木木材さん。独立後もお世話になります。
大屋根の家のダイニングテーブルは、鹿部という土地ならではの
とっておきの材料を使わせていただく事に。お楽しみに!!!
その他、キッチンや手洗いなどは楢材などを選定。
そしてこちらにも鈴木さんお手製の、コンテナを改造して作った
バイオ乾燥機なるものがあります。三上さんも鈴木さんも同様に
人口乾燥のように木の細胞を壊さないよう、 ゆっくりじっくり
愛情を掛けているので、その木材にも優しい表情が現れます。
今回は、木材だけでも5社を適材適所に使い分けております。
実際に使う木材を選定し、さらに実施設計に反映させて行きます。
なかなか本物の木に触れる事の無いご時世ですが、ローコストでも、
手や脚で触れるところには、地場の無垢の木を多く使っていきます。
そして大屋根の家の暖房にはサーマスラブという土壌蓄熱暖房に、
薪ストーブ も使い、南側に太陽光を蓄熱する土間があったり、
十和田石で作るお風呂、ウッドデッキやドックランのあるお庭等
盛りだくさんの楽しい内容になります。
そして実施設計図を元に、見積りをとりましたが予算もオーバー。
オーバー分の減額調整と設計変更を繰り返し、繰り返し、 各業者
さんの協力も受けながら、そしてお施主様にも納得を頂きながら
一昨日無事に請負契約に至りました。
ここへきて大雪が続き、雪解けがの気配がまだ感じられませんが、
3月の着工へ向け、しっかり準備をしていきます。
つづく。