冬至を前に、常盤坂の家は長い冬を迎えました。
常盤坂の家の2階住宅部分は、天井・壁と仕上がり、
続いて最後の床の段取りを進めて行きます。
そんな折、再び北川さんが助っ人に来てくれました。
床の段取りがまだだったので、1階の通り土間の
天井を張って頂く事になりました。
こちらも2階天井と同様、洗いをした秋田杉の板なのですが、
その中でも選りすぐりの板を、この為に取ってありました。
そして板を留める、釘は一本一本抜いて取っていたものですが、
2階の天井でほぼ使い切ってしまったので、次は真鍮釘です。
この真鍮釘は、古くからやっている金物屋さんで、かれこれ
30年ほど売れずに残っていたもの。新品なのに、経年変化で
黒ずんで味が出ております。量り売りで、破格で購入。
常盤坂の家では、こうした新旧の材料が入り交じるのですが、
主には天井と、廊下やトンネル、階段などの移動を伴う場所で
使うように意識しております。移動という移ろいと、古材が
長い年月を経て来た、時の移ろいを掛けています。
そうした思いの一本の軸があると、乱雑にならずまとまります。
流石、プロは仕事が綺麗で早いですね。 ありがとうございます。
近所にストックさせて頂いていた、畳の下地になっていた荒床を
再び持ってきました。 常盤坂の家の荒床は、1階がヒバ材で、
2階が杉板になっていました。今回の2階の床も、この杉板を
ひと手間加えて再利用していきます。
古民家改修などでは、こうした無垢の板を再び機械で削りカンナを
掛けて真新しくして再利用するのが主流です。
それができるのが、また無垢の板の良い所でもある訳です。
常盤坂の家ではどうするか考えました。畳の表替えをするように、
この荒板も表替えをすることにしました。そう、裏で使います。
荒板というだけあって、丸太から大きな鋸で切り出しただけの
粗い木肌になっています。これを機械ではなく、ハンドサンダー
を使って、手でヤスリを掛け使います。約畳25枚分。
コレだけの量を、手でヤスリ掛けするのも大変な作業です。
しかし、手で仕上げなければ出せないものがあります。
手でヤスリを掛けなくては出せないのが、この鋸の痕跡。そして、
木目に沿ってヤスリを掛けるので、木目が多少浮き出てきます。
それを更に洗うと、自然な浮造り仕上げに!
全部が全部、このように綺麗に浮造りになる訳ではありません。
綺麗に木目が通り、柾目に近い部分が綺麗に出ます。
また、こうしている事で、新たな事実が発覚!?
これまで常盤坂の家では、棟札に記載が無く建てた棟梁の名前等
全く分からなかったのですが、荒床の裏から名前が出てきました。
私の推測では、青森ヒバや秋田杉が多く使われているのと、
昭和9年の大火後の建築という事で、青森や秋田から復興の
手伝いに来た、個人の野村という大工さんが建てたのではと。
推測の域は出ませんが、いろいろと想いを巡らせます。
ここまで出来たのが12月11日のお話。次の日、過労で倒れ、
次の日から、別プロジェクト『大屋根の家』が本格的に始動し、
当分、大屋根の家に集中する為、常盤坂の家は冬眠に入ります。
次の工事再開は来年2月下旬からになります。
今年も一年、常盤坂の家と共に、多くの方から支えていただき
ようやくここまで辿り着きました。予定を大きく遅れ、家族や
関係者の方々にもご不便を掛けてしまっております。
勝手ではございますが、ここは無理を押して進めずに行く選択
としました。本年中の皆様のご愛顧に感謝申し上げます。
来年も常盤坂の家共々、宜しくお願い致します。
みなさまも良いお年をお迎え下さい。
つづく。