遂に函館は一昨日、平年よりも少し遅れて初雪が降りました。
そして昨日で、常盤坂の家のリノベーションを始めてちょうど
1年が経ちました。 この家に出会った時から、天井と空間の
イメージが あり、思えば1年前の昨日、真っ先にこの天井裏
の調査に潜りました。その天井を仕上げる日がやってきました。
まずは、天井に張る材料の下準備から。
常盤坂の家に使われていた、天井板、壁の羽目板を大事に剥がし、
ご近所さんの ガレージをお借りし、保管してあったのを使います。
この板類は全て秋田杉。解体する時に、材料になるべくキズを
付けないようにするのに手間は掛かりましたが、 大事にすれば、
また再利用できます。
多くの板は壁に張ってあったもので、壁には板の上に新聞紙など
袋貼りして隙間風を防いだり、壁紙を貼ったりしていました。
この材料を木洗いしていきます。木洗いと言っても、薬品による
危険なものではなく、水洗いです。
薪ストーブはフル回転で、すこしでも水を温めてもらいます。
紙を水に浸し、フヤけてきたらスクレーパーで剥がしていきます。
紙を剥がしたら、スコッチブライトの スポンジで頑固な汚れを
磨き落していきます。
洗い終わったものから、干しては乾燥させます。
そんな地道な作業を、せっかくのお休みの日に福田さんが
お手伝いに来てくれました。
取りあえず板の半分200枚位を洗うのに1週間ほど掛かりました。
まずは切妻天井から仕上げていきます。
天井を張る前に、壁と天井のぶつかる縁に、塗装をのせておきます。
これで、ようやく張り始められます。天井に張るのは、元々
2階の和室の稲子天井に使われていた無節のもの。
板は下から順に、少しづつ重ねる下見板張りにしていきます。
古い板に、新しいピカピカの釘は全く合わないので、この天井を
張るのに使う釘は、もともと使っていた錆びた釘を大事に抜いて
取っていたものを使います。同じ時を重ねたものが一番馴染む。
そして切妻天井が完成!
どんどん行きます。つづいてようやく寄せ棟天井です。
こちらに張るのは、壁に使われていた相決の節のある板です。
寄せ棟天井も下の板に少しづつ重ねる下見板張りで、1段づつ
グルグルと張り進めて行きます。
木は季節によって、空気中の水分を吸放出してくれます。
板は湿気で広がったり、乾燥で縮んだりするので、その際に板が
割れないように釘はなるべく狭く2点打ちとします。
壁の板は幅が、8寸、7寸、6寸、5寸、4寸 と5種類あった。
これを万遍なく使わなくては間に合わないので、寄せ棟天井は
下から上に向かって、板の幅が狭くなるように割り付けて張る。
そして未来への贈り物として、抜け節のところには、今の時代を
未来に伝える為に、裏にメッセージを書いて新聞紙を当てる。
そして遂に寄せ棟の天井も完成しました。
あっという間の一年。そして常盤坂の家リノベーションまさかの
二年目に突入です。(もう、いつ完成とは口に出せません。。。)
この一年で感じたことは、その地域やその場所、その歴史的背景
を知り、未来を考え、ここで何ができるかを考えること。
考えたことを少しでも多くかたちに残し、伝えていくこと。
それは大それたモノにお金を掛けるだけではなく、
手間と愛情をかけてゆくことで残せるモノがあるということ。
終わりなき常盤坂の家での模索。
つづく。