第45話:寄せ棟屋根断熱&浴室防水

立冬が過ぎた函館は例年になく暖かい冬を迎えました。
常盤坂の街路樹のナナカマドは紅葉し、真っ赤な実をつけ
街に彩りを与えてくれております。

▲常盤坂の上より函館湾を見下ろす。

そんな中、常盤坂の家ではいよいよ寄せ棟の天井という最大の山場
へと作業は差し掛かりました。

▲太鼓梁による、伝統的な渡り腮工法の小屋組み。

まずは、階段脇の吹き抜けから煙突を屋根貫通に変える為の下地を
天井に組んでいきます。寄せ棟は、隅木という斜めに掛かる棟木が
ある為に、下地を組む時に角度が複雑になり大変。

▲逆手順で木を組んで納める。後で真ん中を屋根からくり抜く。

そして、寄せ棟の屋根下地なりに透湿防湿シートを下から貼って
いくのだが、桁上や棟木上等はしっかりと気密を確保するのに先に
断熱材を載せフィルムを 捨て張りする配慮が必要になってくる。

▲桁上などの断熱は気流止めの役割が大きい。

そうしていると、午後から半日の時間が空いた北川さんが助っ人に
来てくれた。透湿防水シートを一人で綺麗に張るのはかなり大変
だなと、困っていた時でとても助かりました。

▲しかし段取りが悪く、外廻り一周でシートが無くなる。
▲後日なんとか一人で真ん中部分も綺麗に張り終えました。

シートを張り終えると、断熱材の厚みを確保するのに、合板の
切れ端を2枚分既存たる木にパッキンし 、下地を組んでいく。
4.5寸勾配の屋根たる木が、隅木で交わる部分など、自分には
難易度の高い下地にとても苦労。

▲自分で言うのもなんですが、我ながら綺麗な下地組みです。

そしていよいよ断熱材を入れていきます。

▲屋根断熱も壁と同じ100ミリの程々の断熱。

断熱材を入れ捨て張りフィルムを折り返しておき、防湿フィルム
を張ったら、こちらとで気密テープを張る。

その頃、常盤坂の家のお隣、以前、目の不自由なおばあちゃんが
住んでいたお家についに解体業者がやって来た。

▲常盤坂の家のお隣も、常盤坂の家。我身を削られる思いです。
▲ツタが庇のように建物を覆っている。

毎度お馴染みのご近所さんも寂しげに中を見つめる。
解体業者さんにお願いし、中の使える部材を頂けることに。

▲外に張り巡ったツタを中から見ると何とも美しい。左に床の間。
▲床の間の地板だった栗の木の幅広板を真っ先に頂く。

頂いた部材は常盤坂の家で大切に使わせていただきます。
中の物を出し、解体屋はしばらく忙しいようで来なくなりました。

そして常盤坂の家では浴室の防水工事が始まりました。
浴室は、床〜壁〜天井を全てウレタン防水で包み込みます。
外壁塗装、屋根塗替えをして頂いた伊藤防水さんにやって頂きます。
まずは、耐水合板にプライマーを塗り防水材の付きを良くします。

▲防水マスターしまもりさん。さすがに段取りがすごく良い。

乾いたら次にビス頭を埋め、壁の入り隅、出隅、合板ジョイント
全てにグラスファイバーメッシュを伏せ込みます。

▲不整形な浴室なのでとても塗りづらい。

ウレタン防水は地震等の揺れによって、こうしたジョイントなどが
動き防水が切れることがあるので、それをメッシュで防ぎます。

▲このメッシュが防水層の生命線になる。

メッシュまで終わると面を一気に塗っていきます。

▲1回目は夜遅くまで残業となりました。

3日ほど乾かし、続いて2回目を塗ります。

▲防水はゴムコテで塗り上げます。
▲すっぽり防水層で覆われた浴室。

これで浴室の防水層が完成。2階の作り風呂は水漏れ出来ない
ので 、しっかりとした熟練職人による施工が大事になります。
伊藤防水さん、本当にありがとうございました。
この上に仕上げに左官や自然石を敷いたりと更に続きます。

寄せ棟では、夜なべをしながら断熱材を詰めていきました。

▲隙間なく綺麗に。天井作業は肉体的にキツい作業です。

断熱材が入ると、防湿フィルムを張り、周囲やジョイントなどに
気密テープを張りしっかり密閉して気密性能を確保。
そして太鼓梁を現しにするので、梁にサッとヤスリを掛け磨いて
汚れを落としていきます。

▲長年の煤などで真っ黒になった太鼓梁。

太鼓梁なので樹皮が付きっぱなしのものもありますので、皮を
落さなければなりません。そこで登場するのが皮むき。

▲土台入替をやってくれた大工の津島さんがくれた皮むき。

 独立前に担当した物件の太鼓梁の皮むきをやったことがあり、
これを使うと気持ち良いくらい皮が剥ける。

▲太鼓梁も皮を落すと綺麗に仕上がりました。

これで、天井板を張る下地まで出来上がりました。

そして今日は大学時代の恩師である大野仰一先生が常盤坂の家に
いらっしゃいました。卒業から10年。今もこうしてご批評して
いただけることは、本当に嬉しい限りです。
もう一度立ち止まって、初心に帰る大切な一日になりました。

つづく。