常盤坂の家には仮設トイレもなく、いつも近くの
ドラッグストアさんにお世話になっています。
だから早くトイレが欲しい、ということで
1階のトイレから作りあげていきます。
サッシは元もと付いていたもので、その上のまぐさ(梁)が
2階角の柱になっていて、5寸の梁だけで受けていたので、
この梁に補強を入れながら窓辺を心地よくしていく。
まず、この出窓の樹脂の部分を隠すように窓枠を内側に組む。
さらに内側に古材の土台を付けたし、柱を建て、枕梁を加える
新たに付け加えた窓台の下は、下地を組み断熱材を施工。
窓下の壁を張り、ニッチ収納部分に木のボックスを嵌め込む。
手前の柱間には、差し鴨居と敷居を入れ引き戸になるように
袖の薄い壁の下地をくむ。差し鴨居は込み栓と楔で固定した。
そして、これからがメインイベント。
独立前の師匠の元にいた修行時代に、現場で出た木の切れっ端を
現場の掃除をしながら拾っては、樹種サンプルとして集めていた。
切れっ端だが、ひとつひとつに想い出がある。
それと、常盤坂の家の屋根裏から出てきたお菓子などの木箱や、
木のフタ、表札などのいろいろな木々のコレクション。
自分の積み重ねて来た記憶、常盤坂の家の積み重ねて来た記憶を
融合させ、窓下の壁にコラージュします。
『プリコラージュ』とは、見近に手に入るものやあるものを活かし
新たな価値を見出し作っていく手法で、古民家のリノベーションを
する上でもとても重要な手法で、常盤坂の家でも念頭に置いている。
トイレのような小さな空間では、そうした”遊び”をいれるのに
ちょうどいい大きさで、じっくり鑑賞も出来る。
まず、手洗いのカウンターを3枚の候補の板から、最も馴染む
蔵の板戸の切れ端に決め、これを要に構成していく。
切れ端のコラージュには、自分なりの3つのルールを決める。
①縦の目地は通さないよう、水平目地を強調する。
②同じ樹種が隣り合わないようにする。
③隣りとの厚みを揃えない。
貼るというより、積み上げる感覚。
この3つのニッチは、一番下がペーパー入れ、左上がスプレー等の
備品入れ 、右上がアメニティ入れになっている。
と、ここらで、必要になるアイテムを作りに鉄人の元へ。
来たのは、杉本洋鍛冶工房。常盤坂の家の一部を解体する時に
かすがいやU字のピンなどがでてきたので、それを使う。
まずはU字のピンを曲げて ペーパーホルダーを作ってもらう。
つづいて、かすがいでハンドルをアドリブで作ってもらう。
そして最後に蜜蝋を塗って出来上がり!
さすが鉄人杉本さんです。ありがとうございます!
そしていつからやっているのか、、ようやく コラージュ完成。
その全容を少し紹介いたします。
トイレ入り口の片引き戸は、昔のトイレの引違い戸を転用。
2階の和室にあった欄間は片側障子を張って入れ込む予定。
手洗いは、床下から出てきた素焼きの植木鉢を転用します。
右上の出っ張りに鏡スタンド、その左下の緑青した胴板を張った
出っ張り部分はハンドソープを置く台になっている。
そして、一番下のニッチの上には、横長の少し大きめの真樺の木が
アームレストになっていて、その右下にペーパーホルダーが。
無作為のようにバラバラに見せ、必要なところにあるべきものを
しっかりと配置する。さらにそれを自然に見せる。
ある材料、ある資源を使い作り上げる。『プリコラージュ』は
西洋の考え方であるが、日本にも同じような千利休の『見立て』
という手法があるように、かつてはそれがアタリマエだった。
好きな物はお金を出せば、簡単に買える今の時代では、時間と
手間が掛かりなかなか難しいのだが、 プリコラージュする事で、
常盤坂の家が重ねてきた”時の記憶”を未来に繋いでゆける。
そんな想いを大事に設計をしていきたいと常々思う。
つづく。